【空色の店〜デセオエストレジャ〜】
困ったり悩んだりしている時にだけ、あなたの前に現れる空色の店。
〚ご注意〛
・性別不問ですが、京子だけは変更不可です。
・キャスト様の性別は問いません。
・アドリブは、世界観を壊さない程度でお願いします。
・一人称、語尾等の変更はOKです。
《登場人物》
①空(そら)
空色の店の店主。
性別不問
②ヒメル
空と一緒にいるネコ。
性別不問
③天野京子(あまのきょうこ)(女)
悩みある中学生。
性別変更不可
-------❁ ❁ ❁-----ここから本編-----❁ ❁ ❁-------
ヒメル:「(N)あなたが住み慣れている街に、ふと、見覚えのない路地があったら・・・。
心のままに覗いて見てください。
きっとそこには、あなたが望んでいるものがある・・・かもしれません。」
京子:「(M)最近ネットでまことしやかに流れている、ある噂。
『困ったり悩んだりしている時にだけ、あなたの前に現れる空色のお店。見つけたら願い事が叶うらしい。』
そんなものが本当にあると、信じている訳ではない。そんなに子供ではない。でも・・・」
京子:「本当にあったら、お願い事、したいのになぁ・・・。」
(しばらくの間)
京子:(今日のテスト、98点だった。またお母さんに怒られる。)
京子:「(M)空を見ながら歩く。気持ちが落ちている時、空を見ると少し晴れるような気がするからだ。」
京子:(100点じゃないと、怒りながら泣くんだもんなぁ・・・。)
京子:「(M)なんだか違和感がして、はたと足を止める。
京子:毎日通っている通学路。いつも通っている見慣れた道。なのに・・・。」
京子:(・・・こんなとこに道なんてあったかな?奥には何があるんだろう・・・。)
(少しの間)
(ヒメル、体を起こす)
ヒメル:「・・・空。誰か来るよ。」
空:「そうか。」
ヒメル:「興味なし?」
空:「そんなことないよ。
・・・よし、ヒメル、美味しいロイヤルミルクティーが出来たよ。」
ヒメル:「わぁ!・・・ん〜!いい匂い♪」
空:「そうだろう。
君は猫舌だから、先にお客様を迎えに行ってきてくれるかい?路地に入るか、迷ってるようだから。」
ヒメル:「はぁ〜い!
・・・空、お客様が来る前に、このお店、少し片付けた方がいいんじゃない?商品だかガラクタだか分からないものが、溢れかえってるよ。
・・・・・って、もう遅いか。」
空:「う〜ん、そうかい?これでも片付けたんだけどなぁ。」
ヒメル:「空は片付け下手くそだもんね。後で私が手伝ってあげる。
じゃあ、行ってくるね!」
空:「ああ、頼んだよ。」
(少しの間)
京子:(なんだろう、ここ。なんかすごく気になるけど、寄り道してたらまたお母さんに怒られるし・・・。)
ヒメル:「にゃ〜。」
京子:「あ、ネコ・・・。」
(ヒメル、足元に擦り寄り、喉を鳴らす)
ヒメル:「ごぉろごぉろ」
京子:「わぁ、かわいい。(なでなで)
君はどこの子?首にリボンしてるし、飼い猫だよね?
京子:あ!」
(ヒメル、路地の奥に駆け出して、ちょっと先で京子の方を振り返る)
ヒメル:「にゃ〜。」
京子:「え?なんか呼ばれてるみたい・・・。」
ヒメル:「にゃ〜。」
京子:(どうしよう・・・。早く帰らなきゃ行けないのに・・・。)
ヒメル:「にゃ〜!にゃ〜!」
京子:「あ・・・でも気になる・・・ええい!」
(京子、一歩踏み出す)
ヒメル:「にゃー!」
(少しの間)
京子:「(M)路地の奥まで進むと、おそらく突き当たり・・・だと思う。不思議な建物があった。建物で合っているんだろうか。
建物の壁面が、空と融合している・・・。いや、空とおなじ模様で、どこが境目かがよく分からない。
唯一浮き出るようにある、ステンドグラスのはまったドアから、先程の猫が中に入っていく。」
京子:「こ、ここって・・・。噂になってる・・空色の・・・お店?」
ヒメル:「にゃ〜。」
京子:「あ、入っていっちゃう!」
(京子、ヒメルの後を追って店に入る)
空:「いらっしゃい。」
京子:「あ、すみません、突然。」
空:「いいんですよ。ここはお店ですので。」
京子:「あ、はい!お邪魔します。」
空:「いやぁ、礼儀正しいお嬢さんだ。」
京子:「・・・あの、ここ、なんのお店なんですか?」
空:「まぁまぁ、そう焦らないで。
ちょうど、美味しいロイヤルミルクティーをいれたんだ。」
京子:「え?あ、はい。」
空:「ヒメル、お嬢さんの案内、ありがとう。君の分はここに置いておくね。」
京子:「あ、さっきのネコ!ここのネコだったんですか?」
ヒメル:「そうだよ。君が困っているようだったから、お迎えに行ってあげたんだよ。」
京子:「!・・・・・・・え!?しゃ、しゃ・・・」
ヒメル:「私はヒメル!よろしくね!」
空:「ほらヒメル。ビックリさせちゃったじゃないか。」
ヒメル:「え?あ、そっか!・・・えへ♪」
京子:「しゃ、しゃ、しゃべってる!?ネコが!!」
空:「そうだよ。ヒメルはしゃべれるんだ。」
ヒメル:「しゃべれるし、ロイヤルミルクティーも飲むよ!空のミルクティーは絶品なんだから!」
空:「ありがとう、ヒメル。
さ、君も温かいうちにどうぞ。」
京子:「あ、え、あ、はい、どうも・・・ありがとう・・ございます。」
(ミルクティーを飲んで、一息つく)
ヒメル:「はぁ〜。美味しかったぁ。
どこのミルクティーよりも、やっぱり空の入れたミルクティーが一番だな。」
空:「一気に飲んでしまったのかい?」
ヒメル:「へへっ♪オカワリちょうだい!」
空:「ふふっ。しょうがないなぁ。」
京子:「あ、あの!」
空:「あ、ごめんね。お客様を放ったらかしにしてしまって。
僕は空。このお店の店主です。」
京子:「あ、はい!私は天野京子と言います。」
空:「京子ちゃんだね。ステキなお名前だ。」
京子:「ありがとうございます。
じゃなくて!ここ、なんのお店なんですか?あの、もしかして・・・。」
空:「なんのお店かと聞かれると、なんのお店なんだろうね、ヒメル?」
ヒメル:「もう!空ったら!なんで店主がわかってないんだよぉ!」
京子:「も、もしかして、願いを叶えてくれるというお店ですか?」
空:「あれ?このお店について、何か知ってるのかな?」
京子:「あ、はい、ネットの噂なんですけど・・・。
困っている時にだけ現れる、空色のお店があるって。そのお店は、訪れた人の願いを、なんでも叶えてくれるって・・・。」
空:「そんな噂が流れてるんだ・・・。へぇ、おもしろいね。」
ヒメル:「ネットの噂なんて、眉唾もんが多いけどね!」
京子:「でも・・しゃべるネコがいるなんて、もう普通じゃないし・・・。」
ヒメル:「ヒメル!ネコじゃなくて、ヒメルって呼んでよ!」
京子:「あ、ごめんなさい・・・。」
ヒメル:「ぷんすかっ!」
空:「まぁまぁ、ヒメル、落ち着いて。
ミルクティー、オカワリ入ったよ。」
ヒメル:「わぁ♪ありがとう!!」
京子:「あの・・・。」
空:「ああ、ごめんごめん。また放ったらかしにしてしまったね。
ここは確かに空色の店だよ。でも君が知っている噂とは、ちょっと違うかな。」
京子:「え・・・。」
空:「なんでも願いを叶える訳ではなくて、その人に合った商品をお渡ししているんだ。
だから、じっくり話を聞いて、どんなことに悩んでいるのか、教えてもらう必要がある。」
ヒメル:「そうだよ!間違えて渡すと、とんでもない事になる事もあるからね!」
京子:「と、とんでもない事・・・(生唾を飲み込む)。」
空:「お渡しする商品は、使用方法と使用頻度をきちんとお伝えしてお渡しするから、用法用量を守って使用していただければ、とんでもない事にはならないはずだよ。」
ヒメル:「ミルクティーも、お砂糖を入れすぎると飲めたもんじゃないからね!それと同じさ!」
京子:「は、はぁ・・・。」
空:「さぁ、君も、何か悩んでることや苦しいことがあったら言ってごらん。力になれるかもしれないよ。
ミルクティーでも飲みながら、ゆっくりと、ね。」
京子:「は、はぁ・・・・・。」
(少しの間)
京子:「私には、父がいません。小さい頃に両親が離婚して、今は母と二人暮しです。
父は再婚して、新しい家族と住んでいるのですが、私のことを心配して、時々母の目を盗んで連絡をくれます。」
ヒメル:「良いお父さんじゃない!
どうして離婚したの?」
空:「こら、ヒメル。そんなに無遠慮に話を聞くものじゃないよ。人にはそれぞれ都合があるんだから。」
京子:「いえ、いいんです。
理由は・・・、父の浮気です。父には、再婚相手との間に、私と同い年の子供がいたんです。」
ヒメル:「え!?同い年!?・・・ダメなお父さんじゃん。」
空:「ヒメル。(たしなめる様に)」
ヒメル:「あ・・・ごめんなさい。」
京子:「大丈夫ですから。」
空:「ごめんね。
じゃあ、悩みっていうのは、お父さんとのことかな?」
京子:「いえ、違うんです。父は離婚してからも、私の身を案じてくれています。
悩んでいるのは、母のことです。」
空:「お母さん?」
京子:「はい、母は、父から離婚を切り出された時、半狂乱でした。そりゃそうですよね。浮気してた上に、浮気相手と再婚したいとか、子供もいて私と同い年だとか、そっちの家族を守りたいんだとか・・・。本当に勝手な言い分です。」
ヒメル:「ありゃりゃ。最低のオンパレードだ!」
空:「ヒメル!(少し声を荒らげる)」
ヒメル:「むぐっ!(自分で口を抑える)」
京子:「(かわいた笑い)はは・・・。本当に最低ですよね。
それで母は、父と別れることを選択し、今は私と二人暮しをしています。」
空:「お母さんも、さぞ辛かっただろうね。」
京子:「はい、そうだと思います。それでも仕事に家事にと、頑張ってくれていて、本当に感謝しています。でも・・・。」
空:「でも?」
京子:「たぶん、私と相手の子供が、同い年だから余計にだと思うんですけど、母は私を立派な大人にしようと・・・その・・・。」
ヒメル:「厳しいの?」
京子:「・・・はい。
離婚するまでは、休みの日に一緒にお菓子を作ったり、家族で一緒に近くの公園に出かけてお弁当を食べたり、いつも笑ってて、すごく優しい母だったのに・・・。
離婚してからは、ずっと眉間に皺を寄せて、テストは100点が当たり前。寄り道するのは悪いこと。友達と遊ぶなんてもってのほか。立派な大人になるためには、毎日努力しなきゃならないのよ!って。」
ヒメル:「うわぁ・・・。安心してミルクティーも飲めやしない・・・。」
空:「それは・・・なんというか、お母さんも意地になってしまっているのかな。」
京子:「そうだと思います。噂によると、相手の子供が優秀で、学年トップで生徒会長とかやってるんだとか。」
ヒメル:「あぁ、わかるわかる。そういうの、複雑になるよねぇ。」
京子:「なので、私が同じレベルに居ないと気が済まないみたいで・・・。
テストでトップを維持しないと怒って泣いて・・生徒会長になれなかった時は、半狂乱になって泣いて怒ってを繰り返し、一日中正座させられました。」
ヒメル:「それもう虐待じゃん!虐待反対!!」
空:「それは困ったねぇ。」
京子:「私も、『私はその子とは違う!』って訴えてみたりしたんですけど、聞く耳持たなくて。ずっと『お母さんを悲しませたいのか!』って泣きながら怒鳴るだけなんです・・・。」
空:「きっと、お母さんの悲しさを貯めておけるダムが、もう決壊してるんだろうね。だから貯めておけない。」
ヒメル:「病院行った方がいいよ!人間には、そういう時相談に乗ってくれる病院あったでしょ?」
京子:「・・・そうなんですけど・・・、母に、病院行こうって言えなくて・・・。」
空:「あぁ、そうだよね。ちゃんと時期を見て話さないと、逆効果になりかねない。」
ヒメル:「じゃあどうするの?このまま我慢し続けるの?」
京子:「・・・。・・うっ。・・うっうっ・・・ごめん、なさい・・・。うっ・・。」
空:「あぁ、・・・いいんだよ。泣くことも必要だ。」
ヒメル:「あぁん、もう!空!ティッシュ!ティッシュ用意してあげて!
私の事抱っこする?あったかいから、落ち着くと思うよ?」
京子:「・・うっ・・あり・・とう・・。うっ・・・。」
(京子、ヒメルをギュッと抱きしめる)
ヒメル:「よしよし。涙で全部流したらいいよ!
ここでは誰も怒ったりしない。空の言うように、泣くことも大事だよ。」
京子:「うっ・・ううっ・・。」
(少しの間)
空:「落ち着いたかい?」
京子:「・・はい。すみませんでした。」
空:「いいんだよ。さぁ、新しいミルクティーを入れたよ。温まるといい。」
京子:「ありがとうございます。」
ヒメル:「あ!空!私にも!ミルクティーちょうだい!私も飲みたい!」
空:「慌てなくても、ヒメルの分もあるよ。」
ヒメル:「わぁ!さっすが!へへっ♪」
京子:「私、どうしたらいいんでしょうか・・・。」
空:「うん・・・。本当だったら、誰か信頼出来る大人に、相談するのがいいよ。お父さんとか、先生とか。周りにいる大人に。
そうすればたぶん、君は救われる。」
ヒメル:「君は?」
空:「うん。お母さんがどうなるかは分からない。
君と離されてしまうかもしれないし、病院に無理やり入院なんてこともあり得るからね。」
京子:「え!?・・・そんな・・・。」
ヒメル:「どうにかならないの?空!」
空:「・・・そうだなぁ。」
(空、奥の棚から何かを持ってくる)
空:「君は優しい子だ。お母さんのことを、本気で心配している。・・・君だからこれを渡そう。」
京子:「・・・これは?」
ヒメル:「わぁ〜!きれい!光が当たると、赤にも青にもピンクにも見える!」
京子:「・・・きれい。」
空:「これは『デセオエストレジャ』。願い星という意味だよ。とてもキレイな石でね。七色に輝くんだ。」
京子:「これを・・・私に?」
空:「うん、君に。
これはね、君の願いを、何でも一つ叶えてくれるよ。残念ながら、願いを叶えると、途端に光を失って、ただの石になってしまうんだけどね。」
京子:「・・・本当に?」
空:「本当さ。なんでも一つだけ、ね。」
京子:「一つだけ・・・。」
空:「これを使って、君に幸せが訪れることを願うよ。」
京子:「・・・。」
ヒメル:「空!どうやって使うの?注意点とかは?」
空:「あぁ、そうだった。忘れるところだった。
なんせそれは本当に貴重なもので、さすがの僕も名残惜しくて・・・。だってそれを手に入れるのに、僕は(わざわざ雲の上の・・)」
ヒメル:「(遮って)おほん!!そんなことより!使い方!!」
空:「あぁ、ごめんごめん。そうだったね。
使い方は、その石を君の手でギュッと握って、強く願うだけだよ。願いが成就すると、石は砕けて普通の石と変わらなくなる。」
ヒメル:「へー!そんなことで願いが叶うの?」
空:「そうさ。だから、信頼できる人にしか渡さないんだよ。変なこと願われたら事だからね!
君が本当にお母さんのことを想っているのが伝わってきたから、特別に君にこれを渡そう。
用法用量を守って、正しく使ってくれる事を願っているよ。」
京子:「あ・・・ありがとうございます。」
空:「くれぐれも、変な気は起こさないでくれ。お母さんのことだけを考えて、それを使ってほしい。」
京子:「はい。」
ヒメル:「私だったら、ミルクティーのプールをお願いするなぁ♪」
空:「そんな事にこの石を使われたら、僕はもう泣いて暮らすしかなくなるよ。
僕がこの石を手に入れるために、血を吐くような思いをして、全身(筋肉痛になりながらも・・)」
ヒメル:「あー!!はいはい!!ごめんなさいね!私が悪うございました!!」
京子:「ふふふっ」
ヒメル:「あ!笑った!」
京子:「え?」
ヒメル:「笑顔!かわいいね!」
空:「ずっとその笑顔が見れる未来を、期待しているよ。」
京子:「・・・はい!ありがとうございます。」
京子:「(M)お辞儀をして、姿勢を元に戻すと、そこには店も路地も何も無く、ただの壁が続いていた。
あまりにも突然で、夢でも見ていたのかと一瞬戸惑う。
だが、私の手の中には、固いものが握られていた。
手を開いてみると、それはキラキラと七色に輝いていて、私には、希望の光のように見えた。」
京子:「(M)時計を見ると、まだ5分くらいしか経っていない。そんな訳はないのに、そうであってくれてほっとしている。」
京子:「急いで帰らなくっちゃ。」
(数日後・しばらくの間)
ヒメル:「京子ちゃん、どうしてるかなぁ。」
空:「ん?誰だって?」
ヒメル:「京子ちゃん!また忘れたの?空はすぐ忘れる!」
空:「そうだった?」
ヒメル:「この前店に来た、笑顔のかわいい京子ちゃんだよ!お父さんの浮気のせいで親が離婚して、お母さんの教育の厳しさに困ってたじゃない。」
空:「・・・(考える間)あぁ、あの子か。そうだね、心配だね。」
ヒメル:「・・・忘れてたくせに・・・。」
空:「ん?」
ヒメル:「なんでもない!心配だから、様子見たいな。」
空:「そうだね。じゃあ、京子ちゃんが使っていたこのマグカップを使って、あれからどうなったか覗いてみようか。」
ヒメル:「うん!」
空:「ロイヤルミルクティー入れるから、ちょっと待ってて。」
ヒメル:「相変わらず、便利なんだか不便なんだか分からないね、空のその力。」
空:「そうかい?」
ヒメル:「だって、その人が飲んでたそのカップで、同じ飲み物を入れたら、その人の人生を覗き見できるなんてさ。」
空:「便利じゃないか。」
ヒメル:「どうせなら、会ったことなくても覗き見できるといいのに。会って、しかも飲み物飲ませて、しかもしかもそのカップを使わないと見れないなんて、不便じゃない。」
空:「そんな誰でも彼でも覗き見してたら、僕は犯罪者だよ。」
ヒメル:「アイドルとかさ!私生活気になるじゃん♪」
空:「僕はゴシップ記者じゃないんだぞ。
さ、準備できたよ。」
ヒメル:「・・・京子ちゃん、幸せになってるといいなぁ。」
(回想)
京子:「ただいま。」
(京子、母親に頬をめいっぱい引っぱたかれる)
京子:「!」
京子:「(M)家に帰って早々、母に頬を叩かれた。
そして言われた・・・。
京子:『なんでお母さんの言うことが聞けないの。寄り道せずに帰って来なさいってあれほど言ったのに。』
京子:たった5分遅れただけだ。私には5分の猶予も許されないのか。
京子:そう考えると、悲しくて涙が止まらなかった。
京子:お母さん、なんで?どうしちゃったの?元の優しかったお母さんに戻ってよ。
京子:私の悲痛な想いは、言葉に出来なかった。
そして母の口から告げられる。・・・残酷で、無慈悲な言葉・・・。一番聞きたくなかった言葉・・・。
京子:『あなたなんて、産まなきゃ良かった・・・。』」
(京子、自分の部屋にバタバタと戻る)
京子:「(M)涙が溢れて止まらない。私は生まれてきてはいけなかったのか。母にそう思わせてしまった自分が、どうにも情けなく感じた。
母の為に、いい子でいようと頑張ってきた。母が誇れる、そんな娘になれるように。でも・・・。」
京子:「・・・もう無理・・・もう・・・何もかも・・・。」
(現在)
ヒメル:「ひどい!やだ!止めて!!やめてあげて!!」
空:「ヒメル・・・これはもう起こってしまった事なんだよ。僕達は、何も・・・出来ないんだよ。」
ヒメル:「だって!ダメだよ!こんなのダメ!!」
空:「・・・ヒメル。」
(回想)
京子:「(M)私は手を握りしめた。ギュッと。
想いがこぼれていかないように。願いが・・・伝わるように。
私にはお母さんは救えない。一緒に落ちていくだけだ。どこまでもどこまでも。
それでもいいのかもしれない。それが幸せであるなら・・・。
でも・・・。幸せってこんなだったっけ?もっと温かいものじゃなかったかな?
私は、お母さんを幸せにしたかった。一緒に幸せになりたかった。でも・・・。
だったら・・・。せめて重荷にならないように・・・。これ以上お母さんが、自分を追い詰めてしまわないように・・・。
私は消えよう・・・。お母さんの望み通りに・・・。」
京子:「お母さん、ごめんなさい。
大好きだよ。」
(京子、光に包まれる)
京子:「あったかいな。ヒメルを抱いた時みたい・・・。
・・・お母さんにも・・・昔・・・抱っこして・・もら・・・。」
(京子、消える)
(少しの間)
(現在)
ヒメル:「あ・・・あ・・・。」
空:「・・・。」
ヒメル:「京子ちゃーーーん!!!うわぁぁぁん!!」
空:「・・・おいで、ヒメル。(ヒメルを抱き寄せる)」
ヒメル:「うわぁぁぁん!
うっうっ、幸せになって欲しくて・・・うっ、渡したのに・・うっうっ」
空:「・・・そうだね。」
ヒメル:「ううっ・・京子ちゃん・・・優しい子なのに・・うっ・・うっ」
空:「・・・そうだね。」
ヒメル:「うわぁぁぁん!」
空:「・・・でも、京子ちゃん、最後は微笑んでたよ。」
ヒメル:「・・・ぐすっ・・・ほんとに?」
空:「うん、ヒメルのあったかさと、お母さんの優しさを思い出して、微笑んでた。」
ヒメル:「・・・そっか。・・・ぐすっ。」
空:「本当は、京子ちゃんが幸せになる道を選んでほしかった。それは僕も同じ気持ちさ。」
ヒメル:「・・・うん。」
空:「でも・・・。思い描いていた結末にはならなかったけど、京子ちゃんの苦しさや悲しみは、やっと開放された。
最後の最後で、彼女の微笑みが見れたことで、救われた気がするよ。」
ヒメル:「・・・うん。」
空:「本当は、あの笑顔をずっと見ていたかったけどね。」
ヒメル:「・・・京子ちゃん、今頃天国で笑ってるかなぁ。」
空:「・・・そう願うよ。」
ヒメル:「・・・うん。きっと。笑ってるよね。」
(少しの間)
空:「さてと。僕は次のお客様のために、お店を少し片付けようかな。」
ヒメル:「あー、ダメダメ!空がやると、逆に散らかっちゃうから!
私も手伝うから、一緒に片付けよう!」
空:「そんなことないと思うけどなぁ。」
ヒメル:「あ・・・。」
空:「あ・・・。」
ヒメル:「来たみたいだね。」
空:「新しいお客様が、ね。」
ヒメル:「お迎えの準備しなきゃ。」
空:「ヒメル、よろしくね。」
ヒメル:「うん!任せて!」
END
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