【五重奏(クインテット)】
バーで繰り広げられる男女のやり取り・・・。
この恋の行く末は・・・。
〚ご注意〛
・キャスト様の性別は問いませんが、登場人物の性別変更は不可です。
・アドリブは世界観を壊さない程度でお願いします。
《登場人物》
①三好晃弘(みよしあきひろ)
バーのマスター。落ち着いている大人の男。天然の人たらし。
②小泉幸(こいずみさち)
受付嬢。サバサバ系美女。
③橋本大吾(はしもとだいご)
ガタイがいい。スポーツ好きの営業マン。
④宗方比呂子(むなかたひろこ)
保育士。大人しくて真面目。芯がしっかりしている。
⑤藤野正孝(ふじのまさたか)
大学院で研究職をしている。辛辣だが、根は素直で優しい。
-------❁ ❁ ❁-----ここから本編-----❁ ❁ ❁-------
(バーのドアが開く)
晃弘:「いらっしゃい。」
幸:「晃弘さん、いつもの頂戴!」
晃弘:「いつものね、待ってて。」
幸:「(カウンターに座る)あー、もう疲れたよ〜!ここに来ると癒されるなぁ。」
晃弘:「ははっ、いつもありがとね。今日はどうしたの?仕事?」
幸:「うん、仕事〜。受付に来たお客さんに絡まれちゃって。でもないがしろには出来ないし、ほんとに困っちゃった。」
晃弘:「大変だったね。さっちゃん可愛いから、言いよる男も多いだろ。」
幸:「・・・ふふっ。晃弘さんの、そういうサラッと褒めてくれるところ、大好きだよ。」
晃弘:「そうかい?・・・はい、シンガポール・スリング、お待たせ。」
幸:「ありがとう。頂きます。(飲む)・・・、あぁ、癒される〜。」
晃弘:「疲れた時には甘いお酒だね。」
(ドアが開く)
大吾:「ちーっす!マスター、いつもの頂戴!外あっつくてよ〜!汗だく!いやー、参ったね!」
晃弘:「いらっしゃい。いつものね。」
大吾:「あ、幸、来てたんだ。」
幸:「大吾は〜・・・。もう!もうちょっと静かに入って来れないの?」
大吾:「は?別に普通だろ?」
幸:「私の癒しの一時が〜・・・。」
大吾:「何?疲れてんの?」
幸:「仕事のストレスで吐きそう。」
大吾:「マジか。受付嬢は大変だねぇ。」
幸:「だから晃弘さんに癒されに来たの〜。それをあんたがぶち壊すから。」
大吾:「ぶち壊してないだろ。一緒に楽しく飲もうぜ。」
晃弘:「はい、ラム・コーク、お待たせ。」
大吾:「おっ!ありがと!(一気飲み)・・・っ!かー!うまい!これのために生きてるね!」
幸:「(呆れる)・・・ラム・コーク一気飲みすんのなんか、あんたくらいだよ。炭酸きつくないの?」
大吾:「きつくない!このシュワシュワがいいんだ!マスター!もう1杯!」
晃弘:「はいよ。」
(ドアが開く)
比呂子:「お邪魔します。」
晃弘:「いらっしゃい。」
比呂子:「マスター、いつもの下さい。」
晃弘:「いつものね。待ってて。」
幸:「あ、比呂子!こっちこっち!一緒に飲も!」
比呂子:「あ、幸ちゃん。大吾くんも。」
大吾:「よーっす!」
比呂子:「二人とも仕事の帰り?」
大吾:「おぉ!営業で外歩き回ってるから、汗だくで!そういう時はここのカクテルが飲みたくなるんだよな。」
幸:「あんたは夏でも冬でも、いつも汗だくでしょ?」
大吾:「・・・ふむ、確かにそうだな!ははっ!」
晃弘:「ははっ、いつもありがとね。」
幸:「でもわかるわ〜。私はここに来ると癒されるから、疲れた時はついつい来ちゃう。」
晃弘:「うん、いつでもおいで。」
比呂子:「私も今日は保育園の運動会で、疲れたからちょっと飲みたくて。」
晃弘:「保育士さんは大変だね。」
比呂子:「でも子供達みんな楽しそうだったし、達成感もすごくて。はぁ〜、成功してよかった〜。」
晃弘:「よかったね。はい、パリジャン、お待たせ。」
比呂子:「ありがとう、マスター。(1口飲む)・・・ふぅー、一息つける。肩の荷がおりたよ。」
(ドアが開く)
正孝:「マスター・・・、あ・・・、出直すわ・・・。」
大吾:「あ、なんだよなんだよ!俺らの顔みて引き返すなんて、感じ悪いじゃんかよ!」
幸:「そうだよ、正孝もこっちで飲もうよ!」
晃弘:「いつものかな?」
正孝:「あ、あー・・・、じゃあ、いつもの・・・。」
晃弘:「はーい。」
比呂子:「正孝くん、こっちの席、空いてるよ。」
正孝:「あぁ、うん。ありがと。」
大吾:「お前も今帰りか?」
正孝:「そうだよ。ゆっくり飲もうと思ったのに、そろい踏みとはな。」
幸:「は〜?まるで私たちがいると、ゆっくりできないみたいな言い方じゃない。」
正孝:「その通りだろ。」
幸:「ひっどぉ〜い!」
大吾:「(幸のマネ)ひっどぉ〜い!正孝ったらぁ!」
幸:「あ、何よ大吾!」
正孝:「クッ、・・・似てる。」
幸:「似てないでしょ!」
比呂子:「(笑いをこらえきれない)ふっ、ふふふふふ・・・。」
幸:「比呂子まで!ひどい!」
晃弘:「はははっ、はい、正くんおまたせ、ライラだよ。」
正孝:「あ、ありがとうございます。(1口飲む)・・・はぁ、うまい。」
大吾:「相変わらず強いの飲んでんね。」
比呂子:「正孝くん、ザルだもんね。」
幸:「はー、羨ましい!」
大吾:「なー!」
晃弘:「ははっ、君たちはいつも示し合わせたかのように揃うね。ほんとに仲が良い。」
比呂子:「特に約束はしてないんですけど。」
正孝:「本当に迷惑な話だ。」
幸:「ほんとよね〜。」
大吾:「あ、なんだよ、みんなで飲んだ方が楽しいだろ?」
正孝:「俺は落ち着いて飲みたい。」
幸:「私も。」
大吾:「あ〜?寂しいこと言うなよ〜!」
比呂子:「ふふっ、私はみんな揃ってると楽しくていいな。このお店に来ると、みんなのこと探しちゃう。」
幸:「あぁっ!比呂子!(抱きつく)あんたはなんて可愛いの!」
比呂子:「わっ!幸ちゃん苦しいよ!・・・へへ。」
大吾:「俺も俺もー!(混ざろうとする)」
幸:「(手で止める)あんたはむさ苦しい!」
大吾:「なんでだよー!」
正孝:「大吾、訴えられるぞ。」
晃弘:「私が痴漢の経緯をきちんと説明するからね。ここの責任者だから、どんと任せなさい。」
大吾:「痴漢!?マスター、助けてくれないのかよ!?」
比呂子:「差し入れは何がいい?」
大吾:「捕まんのかよ!?ここは敵ばかりだーー!!」
(全員で笑う。アドリブで、なんでだよー、とか、当たり前、とか入れてもいい。)
(少しの間)
大吾:「(寝息・いびき)ぐごー!」
正孝:「あーあ、大吾、つぶれて寝ちゃってるわ。」
比呂子:「あ、本当だ。いっぱい飲んでたからねぇ。」
幸:「もう、こいつは世話のやける!」
晃弘:「朝まで転がしといてもいいんだよ。そのうち起きるだろ。」
幸:「晃弘さんに迷惑かける訳には行かないわよ。
ほら!大吾ー?起きなさい!ここで寝てちゃ、お店に迷惑でしょ〜!」
大吾:「ぐ、・・・ん〜、俺、・・・おなかいっぱい・・・。ぐー。」
比呂子:「あはは、寝ぼけてる。」
正孝:「こいつ本当にめんどくさい。やっぱり一緒に飲むの、御免こうむるわ。」
幸:「まったく!ほら、帰るわよ〜!
正孝、タクシーまで担いでよ。」
正孝:「なんで俺が。」
幸:「あんたしか担げないでしょ、この大男。」
正孝:「ほんと迷惑なやつ。・・・よっ。ほら、しっかり立て!」
大吾:「ん〜、なんだよぉ・・・。」
比呂子:「あ、手伝うよ!こっち側支えるね。」
正孝:「比呂子、無理すんなよ。潰されるぞ。」
(3人、外に出ていく)
幸:「晃弘さん、お勘定ね。大吾の分は立て替えとくから。」
晃弘:「次に来た時に、本人に徴収するからいいんだよ。お得意さんだからね。」
幸:「いいのいいの、こっちもここに来れば会うから。晃弘さんに迷惑かけて、ここ出禁になる方が困るし。私の唯一の癒し空間だから。」
晃弘:「ははっ、さっちゃんはいつも優しいね。」
幸:「そんな事ないって!」
晃弘:「またおいで。その時は一杯奢るから。」
幸:「やった!晃弘さん、やっさしー!」
晃弘:「ははっ。癒しにはなったかい?」
幸:「・・・うん。」
晃弘:「そりゃ良かった。」
幸:「・・・あ、晃弘さん、今度、えっーと・・・。」
晃弘:「ん?」
幸:「えー・・・、あ、カクテルの作り方教えてくれない?」
晃弘:「カクテルの作り方?」
幸:「そう、カクテル作ってる晃弘さん、かっこいいから、私もできるようになりたいなぁってさ!・・・だめ?」
晃弘:「ああ、いいよ。時間がある時にでも、遊びにおいで。待ってるから。」
幸:「っ!うん!また来るね!」
晃弘:「ああ。」
比呂子:「(遠目から)幸ちゃーん?タクシー来たよー!」
幸:「あ、うん!・・・じゃあ、晃弘さん、またね!」
晃弘:「またね。」
(店の外)
正孝:「おせーぞ。」
幸:「ごめん!」
比呂子:「あれ?幸ちゃん、顔赤い?大丈夫?」
幸:「あ、酔っちゃったかな!ははっ・・・。」
比呂子:「・・・マスターと、何か話してたの?」
幸:「うん、ちょっとね。」
正孝:「女子二人でそっちのタクシー乗って。比呂子の家寄ってから、幸の家だったら、行きやすいだろ。」
比呂子:「うん、ありがとう。」
正孝:「俺はこのバカ家まで送ってから帰るから。気をつけて帰れよ。」
幸:「比呂子には私がついてるから大丈夫よ。」
比呂子:「うん!」
正孝:「じゃあな。」
比呂子:「バイバイ。」
幸:「ありがとね。」
(大吾と正孝、タクシーに乗る)
幸:「さてと、私たちも行こっか。」
比呂子:「うん。」
(タクシーに乗る)
比呂子:「幸ちゃん、さっきマスターと、何話してたの?」
幸:「え?」
比呂子:「なんか話し込んでたから。」
幸:「あ、えーっと、また来ますねーとか、癒されたーとか、そんなとこ?」
比呂子:「ふぅーん、そっか。」
幸:「・・・なんで?」
比呂子:「ううん、なんか気になったから聞いただけ!・・・幸ちゃん、顔赤かったし。」
幸:「へ!?」
比呂子:「・・・バレバレだよ?」
幸:「え!?な、なにが?」
比呂子:「好きなんでしょ、マスターの事。」
幸:「え!?な、なんで!?」
比呂子:「見てたらわかるよ。マスターの前だと、幸ちゃん、すごく可愛いもん。」
幸:「あ、あはははは・・・。マジ?」
比呂子:「うん。」
幸:「・・・たはー・・・。そっかぁ。・・・あ!もしかして大吾とか正孝も・・・っ!」
比呂子:「いや、あの二人は気づいてないと思うよ、鈍いし。ふふっ。」
幸:「あ・・・、そ、そうだよね。良かった。・・・誰にもばらすつもり無かったんだけどな。」
比呂子:「見てたらわかっちゃった。・・・ごめんね。」
幸:「なんで比呂子が謝るのよ。」
比呂子:「だって、バレたくなかったんでしょ?」
幸:「そうだけど・・・。」
比呂子:「幸ちゃん。」
幸:「・・・わかってる。比呂子の言いたいことは、分かってるから。」
比呂子:「そっか。わかってるんだ。・・・だったら尚更だよ。マスターはだめ。」
幸:「・・・うん。」
比呂子:「・・・奥さんいるんだよ、マスター。」
幸:「・・・分かってるよ。でも・・・。」
比呂子:「でも?」
幸:「別居してるって聞いた。」
比呂子:「・・・だとしても。」
幸:「分かってる!頭ではわかってるの、ダメだって!でも・・・。」
比呂子:「・・・。」
幸:「(消え入りそうな声で)・・・好きなんだもん。」
(沈黙)
比呂子:「・・・また、ゆっくり話聞くよ。」
幸:「・・・え?」
比呂子:「幸ちゃんの事だから、誰にも言えなくて辛かったでしょ?今日はもう遅いから帰るけど、吐き出せる友達ができたのはいい事でしょ?」
幸:「・・・比呂子・・・。」
比呂子:「ね?」
幸:「・・・軽蔑しないの?」
比呂子:「しないよ。」
幸:「最低じゃん、私。」
比呂子:「(小さい声で)・・・私も、苦しいけどやめられない恋って、分かるから。」
幸:「え?何?」
比呂子:「ううん、苦しそうな幸ちゃんを、見てられなかっただけだから。なんでも話して。」
幸:「・・・っ、比呂子。」
比呂子:「ん?」
幸:「ありがとう。」
比呂子:「・・・うん、またね。」
(比呂子、タクシーを降りる)
(間)
正孝:「大吾ー!着いたぞー!」
大吾:「ん〜・・・。」
正孝:「(タクシーの運転手に向かって)ちょっとここで待っててください。こいつ家に届けたら戻るので。
ほんとにもう、めんどくせーな。」
大吾:「・・・さ、さちー・・・。」
正孝:「幸はもう帰ったよ。・・・っ、ほんとに重いな、おまえ。」
大吾:「・・・好きだー・・・。」
正孝:「・・・っ!は!?あっ!」
(大吾を落とす)
大吾:「っ!いって!・・・あれ?ここ?」
正孝:「お前・・・。」
大吾:「あれ?正孝?あれ?俺、マスターんとこで飲んでたはずじゃ?」
正孝:「・・・はぁ〜。お前が酔いつぶれて寝ちまったから、俺が運んできたんだよ。ここは、お前のマンションのエントランスホール。」
大吾:「・・・あー、あちゃー!すまん!ありがとな!あ、どうせだから泊まってく?明日休み?」
正孝:「休みだけど・・・。」
大吾:「じゃあ飲み直そうぜ!」
正孝:「タクシー待たせてるから。」
大吾:「あぁ、玄関とこで?帰ってもらえばいいじゃん、俺言ってくるよー!」
正孝:「あ、あぁ・・・。」
大吾:「ちょっと待ってろ!(走ってタクシーのことろに行く)」
正孝:「・・・あ!お金払ってない!大吾の財布、俺が持ってる!ちょ、ちょっと待て!(追いかける)」
(大吾の部屋)
大吾:「いやー、ほんとにごめんな!何から何まで!」
正孝:「いや、いつもの事だしいいけど・・・。」
大吾:「その辺座ってよ。今ビール出す。」
正孝:「あ、ああ・・・。」
大吾:「ん?何?なんかタクシー降りてからお前おかしくない?もごもごしてるっつーか。トイレ?ほい、ビール。」
正孝:「ありがと。」
大吾:「(一気飲み)・・・くっくっ。」
正孝:「お前、幸の事好きなの?」
大吾:「っ!?ぶふーーーっ!!!な、な、なんだよ、いきなり!?吹き出しちまったじゃねーか!」
正孝:「汚ねーな。」
大吾:「お前のせいだろ!?お前が変な事言うから!」
正孝:「だって、好きなんだろ?」
大吾:「な、なんでお前が、それ!?」
正孝:「さっき寝ぼけて言ってた。ほんっとお前は隠し事できねーな。」
大吾:「おま、お前、誰にも言ってねぇだろうな!?」
正孝:「言ってねぇって言うか、さっき聞いたばっかりだし。」
大吾:「そ、そうか・・・。」
正孝:「・・・。」
大吾:「いや、な?マスターの所でみんな出会ってさ、つるむようになって、結構経つだろ?」
正孝:「あぁ、もう5年くらいか。」
大吾:「最初は、面倒見のいい美人さんだなぁ、とか思ってたくらいでさ、別に意識とかしてなかったんだけど、その、知れば知るほど味が出るって言うか、スルメみたいにさ、どんどん良い所が見えてきたって言うか・・・な?あいつのツッコミ心地いいし・・・さ。居心地良くて・・・さ。そしたらなんか、いつの間にか・・・さ。(尻すぼみになっていく)」
正孝:「(被せ気味に)何ごにょごにょ言ってんだよ。」
大吾:「ごにょごにょってなんだよ!」
正孝:「好きなんだろ?」
大吾:「っ!ああ、好きだ!俺は幸が好きだーー!!」
正孝:「うるせーっての!深夜だぞ!」
大吾:「なんだよ!つめてーな!お前から聞き出したんだから、もうちょっと、こう、さぁ!」
正孝:「男の恋バナに興味はない!」
大吾:「だからお前から聞いたんだろーが!」
正孝:「お前と幸か・・・。いいんじゃね?お似合いだよ。」
大吾:「お、おう。ありがと。・・・でもなぁ、なんか、箸にも棒にも引っかからないっつーか、暖簾に腕押しっつーか・・・。」
正孝:「あっちにはその気はねぇんだろ。」
大吾:「はっきり言うな!傷つくだろ!」
正孝:「絡むなよ。」
大吾:「その気がねぇのは分かってんだよ。でもさぁ、なんとかなんねぇかなぁ・・・。振り向かせるってどうやって・・・?」
正孝:「知らねぇよ。」
大吾:「・・・なぁ、正孝、お前、恋してる?」
正孝:「っ!ぶぅーーー(吹き出す)!な、何!?」
大吾:「お前モテそうだもんな!してるよな!」
正孝:「うるせーよ!」
大吾:「彼女いる?その辺聞いたこと無かったよな!」
正孝:「・・・!」
大吾:「なんで黙るんだよ!あ、さてはお前も片想いだな!?誰だよ!大学院生の女か?比呂子か?あ、まさか!幸じゃないだろうなー!」
正孝:「お前はもう寝ろ!さっさと寝ろ!」
大吾:「幸なのか!?幸なんだな!?」
正孝:「ちげーよ!!俺もう寝る!話しかけてくんな!」
大吾:「ほっ!ちがうのか!よかった!じゃあ誰?」
正孝:「・・・(狸寝入り)。」
大吾:「教えろよー!!」
(別日)
晃弘:「やぁ、いらっしゃい。」
幸:「お邪魔します。」
晃弘:「いつものかい?」
幸:「ううん、今日は、晃弘さんがもし良かったらカクテル作り教えてもらおうと思って。混んでる?」
晃弘:「平日だから、そんなに混んでないよ。もう一杯カクテル注文入ってるから、ちょって待っててね。」
幸:「はーい。」
(晃弘、シェイカーを振る)
幸:「はぁ、晃弘さんのシェイカー振る姿って、ほんと綺麗だよね。丁寧って言うか。」
晃弘:「そうかい?ありがとう。そう言ってくれるのは、さっちゃんだけだよ。」
幸:「ほんとにそう思うもん。どのカクテルも、丁寧に作られてるから美味しいんだね、きっと。」
晃弘:「愛情込めて作ってるからね。」
幸:「ふふっ、愛情、かぁ。」
(晃弘、カクテルを提供する)
晃弘:「どうぞ。」
晃弘:「よし、さっちゃん、カウンターの中に入っておいで。」
幸:「あ、うん。」
晃弘:「カウンターくぐる時、頭気をつけてね。」
幸:「え?っ!痛っ!(おでこをぶつける)」
晃弘:「っ!大丈夫かい?ぶつけた?」
幸:「あははっ、せっかく教えてくれたのに、ぶつけちゃった。ははっ!恥ずかしいっ!」
晃弘:「どこ?(顔をのぞき込む)」
幸:「おでこ・・・っ!え!?」
幸:(っ!ち、近いっ!)
晃弘:「赤くはなってないね。痛む?」
幸:「だ、大丈夫!!」
晃弘:「そっか、良かった。さ、おいで。」
幸:「え、あ、うん・・・。」
晃弘:「まずはシェイカーは使わずに、簡単に作れるものから教えるね。何が飲みたい?」
幸:「えーっと、甘いのかな?」
晃弘:「ふむ、じゃあ定番のカルーアミルクでも作ろう。」
幸:「カルーアミルク、好きー!」
晃弘:「さっちゃんはミルク系も好きだよね。」
幸:「ミルク系って癒されるから。飲むとほっとする。」
晃弘:「カルーアミルクは女性に人気だけど、コーヒーリキュールは度数高めだから、飲む時は気をつけないと。悪い男に引っ掛からないようにね。」
幸:「その点は大丈夫!私モテないから、あははっ!」
晃弘:「・・・そういうところが心配なんだよ。」
幸:「え?」
晃弘:「さっちゃんは自分を卑下することが多いけど、十分魅力的なんだから、気をつけなきゃダメだよ。じゃないと、私みたいな悪い大人に騙されるぞ。」
幸:「えっ!?」
幸:(それってどういう・・・?)
晃弘:「さっ、リキュールが準備できたよ。これを、コーヒーリキュールが1、ミルクを3の割合でコップに入れる。」
幸:「あ、1:3ね。」
晃弘:「あとはステアして終わり。」
幸:「ステア?」
晃弘:「混ぜることだよ。うちのカクテルは、さらにシナモンを入れてる。」
幸:「あー、だからいい香りがするんだね。」
晃弘:「女性に好評だからね。」
幸:「あー、悪い大人だ。」
晃弘:「ははっ、そうだよ、悪い大人だ。さっちゃんも、引っかからないように。」
幸:「・・・うん。」
幸:(無理だよ。もう引っかかってる。もう・・・、戻れないよ・・・。
皆がマスターって呼ぶ中、晃弘さんって呼んでみても、こうやってカクテルを学ぶって口実を作って隣に立ってみても、どんなに可愛いって言ってくれたとしても・・・。私を女としては、見てくれないんでしょう?
奥さんとは別居してるんでしょう?私を見てよ。せめて女としてみて・・・。)
晃弘:「・・・?さっちゃん?」
幸:「え!?」
晃弘:「どうした?もう酔った?」
幸:「あ、う、うん、ちょっと酔ったかな?」
晃弘:「珍しいね、お酒強いのに。」
幸:「ほんとにねー!疲れてるのかなぁ?」
晃弘:「それは大変だ。早く家に帰って休んだ方がいいよ。タクシー呼ぶかい?」
幸:「あ、ううん、このカルーアミルク全部飲んだら、烏龍茶で酔い覚ましてから帰る。大丈夫だから。」
晃弘:「・・・そうか。無理はダメだよ。(頭をポンポン)」
幸:「っ!?あ、ありがとう・・・。」
(ドアが開く)
比呂子:「お邪魔します。」
晃弘:「いらっしゃい。」
比呂子:「いつもの下さい。」
晃弘:「はい。あ、ひろちゃん、さっちゃん来てるよ。」
比呂子:「っ!本当ですか?」
幸:「あ、比呂子。」
比呂子:「幸ちゃん・・・。どうしたの?顔赤いよ?」
幸:「え!?いや、ちょっと酔っちゃって、酔い覚ましてたとこ。」
比呂子:「・・・ふぅ〜ん。
(小声)マスターと何かあった?」
幸:「っ!ないない!!・・・なんでもない・・・。」
比呂子:「そ?」
幸:「・・・うん。」
晃弘:「はい、パリジャン。」
比呂子:「ありがとうございます。
・・・ねぇ、マスター?」
晃弘:「なんだい?」
比呂子:「不躾なこと聞きますけど、マスターって結婚してますよね?」
幸:「っ!」
晃弘:「あぁ、してるよ。」
比呂子:「別居してるって本当ですか?」
幸:「比呂子っ!」
晃弘:「・・・なんだい、藪から棒に。」
比呂子:「どうなのかなぁって思って。ちょっとした好奇心です。答えたくなかったら、言わなくても大丈夫ですけど・・・。」
晃弘:「うーん、別居というか・・・、妻は今入院しててね。だから、別居と言えば別居かな?ははは。」
比呂子:「え?」
幸:「入院?」
晃弘:「ちょっと心の方を患っていてね。長く入院してるんだ。」
幸:「・・・そうなんだ。」
比呂子:「すみません。立ち入ったことをお聞きして。」
晃弘:「いいよいいよ。私が仕事仕事で妻の話を全然聞かなかったから、ずっとすれ違っていてね。こうなるまで、気が付かなかったんだ。
本当に、私は妻の何を見ていたんだろうね。こんなに追い詰めるまで気が付かなかっただなんて。夫失格だ。
だから、今更かもしれないけど、時間の融通が効く仕事に変えて、昼間は妻の所に顔を出してる。妻との時間を作りたくてね。」
比呂子:「そうですか・・・。」
幸:「・・・っ!」
(幸、立ち上がり店を飛び出す)
比呂子:「あ!幸ちゃん!
すみません、今日はこれで。お会計、2人分置いておきますね!
幸ちゃん!」
晃弘:「あ、あぁ、またおいで。」
(店の外で幸に追いつく比呂子)
比呂子:「幸ちゃん!」
幸:「っ!・・・なんで!?」
比呂子:「・・・。」
幸:「なんであんなこと聞いたの!?晃弘さんの傷を抉る様なこと!」
比呂子:「・・・ごめん。」
幸:「なんであんな!・・・奥さんを大切にしてるって顔・・・。・・・後悔してるって顔・・・。うぅ・・・。」
比呂子:「・・・ごめんね。・・・ただ・・・。」
幸:「ただ何!?晃弘さんを傷つけて楽しい!?私を傷つけて楽しい!?あんな顔、見たくなかった!あんな、・・・奥さんを思って出す声なんか、聞きたくなかった!」
比呂子:「・・・ごめん。マスターの今の状況が分かればいいなと思ったの。別居してるって言ってたから、別れるのかなって。・・・余計なお世話だったね。ごめん。」
幸:「ほんとだよ!余計なお世話!私は今のままで十分幸せなの!邪魔しないで!もう、着いてこないでよ!(走り去る)」
比呂子:「・・・・・・・・・ごめんね。・・・だって、好きだから・・・。」
(泣きながら走る幸)
幸:「・・・っ!はぁ・・・はぁ・・・うっ、はぁ・・・。」
大吾:「あれ?幸?」
幸:「っ!?・・・だ、大吾?」
大吾:「こんなとこで何して・・・えっ!?泣いてんのか!?」
幸:「・・・っ、泣いて、ないし。」
大吾:「泣いてんだろうが!ど、どうしたんだ!?仕事で嫌なことでもあったか?嫌なお客さんとか・・・、あ、マスターんとこで飲むか?話聞くし!」
幸:「(被せて)嫌!」
大吾:「・・・え?」
幸:「マスターのところは・・・嫌。」
大吾:「・・・マスターになんかされたのか?」
幸:「・・・されて、ないし。」
大吾:「じゃあなんで泣いてんだよ!」
幸:「・・・から、泣いてないってば。」
大吾:「・・・っ!(走り出す)」
幸:「だ、大吾!?どこ行くの!?」
大吾:「お前じゃ話にならねぇから、マスターに直接聞きに行く!」
幸:「えっ!?待って!」
大吾:「無理!お前泣かせたんなら、一発殴ってやんなきゃ気がすまねぇ!」
幸:「ちょ、ちょっと!」
(間)
(比呂子、道端でうずくまって泣いてる)
正孝:「え?比呂子、か?」
比呂子:「(ビクッとする)っ!」
正孝:「どうしたんだよ、こんなとこで。」
比呂子:「・・・なんでもない。」
正孝:「・・・え?泣いてんのか?」
比呂子:「・・・。」
正孝:「・・・どうした?」
比呂子:「正孝くん・・・、私、・・・余計なことしちゃった。」
正孝:「・・・何?」
比呂子:「余計なことして、幸ちゃん傷付けちゃった。」
正孝:「幸を?」
比呂子:「うん。幸ちゃんのこと想うフリして、本当は逆のこと思ってたから、バチが当たったんだ。」
正孝:「逆のこと?」
比呂子:「うん・・・。幸ちゃんの不幸を願ってた・・・。上手くいかなければいいと思ってた。話聞くよ、とか、友達ヅラして、本当は全然友達じゃなかった。」
正孝:「・・・。」
比呂子:「本当に、最低だよ。自分の事、軽蔑する。自分の事しか考えてない、最低なヤツだよ。」
正孝:「・・・そっか。」
比呂子:「・・・うん。」
正孝:「でも、やっぱり幸の事想ってるから、ここで膝抱えてたんだろ。」
比呂子:「・・・。」
正孝:「比呂子は、幸の事大切に思ってるから、傷つけた事、後悔してるんだろ。」
比呂子:「・・・そうじゃない。」
正孝:「・・・え?」
比呂子:「・・・そうじゃないんだよ。私は、汚いの。腹黒くて、そのくせ表面だけ良い子を装って。そんなヤツなの。」
正孝:「そんな事ないよ。」
比呂子:「そんな事あるの!」
正孝:「・・・っ!」
比呂子:「私は!・・・っ!私は・・・、幸ちゃんの事が大好き。」
正孝:「・・・うん。」
比呂子:「・・・恋愛対象として好きなの。」
正孝:「・・・うん。」
比呂子:「・・・。引いた?」
正孝:「いや・・・。ちょっと、そんな気はしてた。」
比呂子:「そっか。」
正孝:「うん・・・。」
比呂子:「この気持ちは、誰にも話さず、墓場まで持っていこうと思ってた。幸ちゃんが幸せだったらそれでいいじゃないって、自分に言い聞かせて。でも・・・。幸ちゃんが恋してることを知って・・・、幸ちゃんの恋してる顔を見て、タガが外れた。嫉妬したの。」
正孝:「・・・うん。」
比呂子:「それで、幸ちゃんの気持ちも考えず、相手に探りを入れて、幸ちゃんを傷付けて、相手も傷つけて・・・。本当に最低。」
正孝:「・・・そんな事ないよ。」
比呂子:「・・・。」
正孝:「恋すると、皆そうだよ。ままならないことばっかりだ。本当は優しくしたいのに、出来なかったり。八つ当たりしたり。そんな事、したくないのに。」
比呂子:「・・・うん。」
正孝:「・・・でも、隠し通すんだろ?幸には。」
比呂子:「うん、墓場まで持っていく。・・・迷惑かけたくない。」
正孝:「迷惑かどうかは幸に聞いてみないと分からないけど、比呂子がそう決めてるんなら、俺は何も言わないよ。」
比呂子:「・・・うん。」
正孝:「まずは、幸と仲直りだな。」
比呂子:「・・・できるかな・・・。」
正孝:「出来るよ。幸も、お前の事大好きだと思うぞ。よく好き好き言って抱きついてるじゃん。」
比呂子:「・・・うん。」
正孝:「幸に電話してみるよ。ちょい待ってて。」
比呂子:「・・・うん。・・・正孝くん。」
正孝:「ん?」
比呂子:「・・・ありがとう。」
正孝:「いーえ。」
(正孝、幸に電話をかける)
正孝:「あ、もしもし、幸?」
幸:「正孝?!大変なの、助けて!」
正孝:「は?」
幸:「大吾が!晃弘さんを殴るって!」
正孝:「はい?!」
幸:「私を泣かせたからって!」
正孝:「よく分かんないけど、今どこ!?」
幸:「バーに向かってる!大吾、走って行っちゃって!」
正孝:「俺達も今から行く!」
幸:「え?俺『達』?」
正孝:「今比呂子と一緒なんだ!」
幸:「あ、比呂子と・・・。」
正孝:「とりあえず、すぐ向かうから!」
(電話を切る)
正孝:「比呂子!バーにいくぞ!」
比呂子:「え!?」
正孝:「なんか大吾がマスターを殴るって言ってるらしい!」
比呂子:「なんで!?」
正孝:「よく分かんないけど、急ぐぞ!」
比呂子:「あ、うん!」
(バーのドアが開く)
大吾:「っ!マスター!」
晃弘:「あぁ、大吾。いらっ(しゃい)」
大吾:「(被せて)テメー!」
(大吾、晃弘の、胸ぐらを掴む)
晃弘:「わっ!くっ、なんだい?」
大吾:「よくも幸を泣かせやがったなぁ!」
晃弘:「え!?」
大吾:「幸を泣かせただろ!ふざけんな!」
晃弘:「な、なんのことだい?」
大吾:「知らねぇとは言わせねぇぞ!」
晃弘:「いや、よく分から(ないけど)」
(ドアが開いて幸が入ってくる)
幸:「(晃弘が言い終わらないうちに)だ、大吾!」
大吾:「幸は泣いてたんだぞ!お前のせいで!」
晃弘:「何を言って・・・?」
幸:「大吾!違うから!」
大吾:「心当たりはねぇのかよ!」
(ドアが開く)
正孝:「っ!大吾!」
比呂子:「大吾くん!」
大吾:「一発殴らないと気が済まない!」
正孝:「落ち着け大吾!」
比呂子:「大吾くん!落ち着いて!」
幸:「やめてよー!」
晃弘:「・・・いいよ、それで大くんの気が済むなら。」
幸:「え?!」
大吾:「くっ!いい度胸だ!おらぁ!」
(大吾、晃弘を殴る)
晃弘:「ぐっ!」
幸:「晃弘さん!」
晃弘:「っ、ぃててて・・・。」
大吾:「これぐらいで許されると(思ってんなよ)」
(間髪入れずに、幸、大吾にビンタ)
幸:「っ!ふざけないでよ!」
大吾:「・・・へ?」
幸:「なんであんたはそう考え無しなのよ!」
大吾:「え?だって・・・、幸が・・・。」
幸:「私が、晃弘さんに泣かされたって言った?言ってないわよね?だって違うから!」
比呂子:「・・・大吾くん、幸ちゃんは、私とケンカして泣いたんだと思う。私が酷いことしたから。」
幸:「比呂子・・・。」
比呂子:「ごめんね、幸ちゃん。本当にごめんなさい。」
幸:「・・・ううん、私こそごめん。カッとなっちゃって。酷いこと言ったね。ごめんなさい。」
大吾:「・・・え!?・・・じゃあ、マスターは?」
正孝:「・・・あほ。」
晃弘:「は〜、いてて、大くん、落ち着いたかな?」
大吾:「え!?」
正孝:「お前の盛大な勘違いだ。」
大吾:「・・・まじ?」
幸:「・・・謝りなさい!」
大吾:「・・・。」
幸:「謝れって言ってんの!」
大吾:「ご、ごめんなさいっ!!俺、てっきり・・・!」
晃弘:「大丈夫だよ。誤解が解けたなら良かったよ。」
大吾:「・・・すみません・・・。」
幸:「ごめんなさい、晃弘さん。勘違いとはいえ、こんなこと。」
大吾:「ごめんなさい・・・。」
晃弘:「いやいや、気にしないで。」
大吾:「気にしますぅ・・・。」
幸:「ふぅ〜・・・。大吾。」
大吾:「は、はい!」
幸:「あんたが私のために怒ってくれたのは分かってるから。」
大吾:「・・・へ?」
幸:「ありがとね。」
大吾:「・・・さ、幸〜。」
幸:「でも、ちゃんと反省しなさいね!」
大吾:「・・・はい。」
晃弘:「いやぁ、でもお客さんちょうど切れてるところで良かったよ。大事にならずに済んだ。」
正孝:「いや、今からでも遅くない。警察に突き出すか。」
大吾:「え!?」
比呂子:「差し入れは持っていくね。何がいい?」
大吾:「え!?え!?」
幸:「電話電話〜!」
大吾:「ごめんってば!!勘弁してよー!!」
(皆で笑い合う)
幸:「さて、帰りますか!」
比呂子:「うん。」
大吾:「帰ろう!」
正孝:「お前は反省してろ。」
大吾:「ごめんってば。」
晃弘:「ははっ、皆、また来てね。」
(4人同時に)
幸:「はーい。」
比呂子:「はい。」
大吾:「おぅ!」
正孝:「あぁ。」
晃弘:「いつでも待ってるよ。」
(間)
比呂子:「幸ちゃん、本当にごめんなさい。」
幸:「もういいよ、私も悪かったし。」
比呂子:「でも・・・。」
幸:「比呂子のおかげで、ちょっとスッキリしてるの。」
比呂子:「え?」
幸:「最初は、なんで!?お節介!って思ったけど。やっぱり、不倫はだめだよねぇ。誰も幸せにならない。あの時比呂子に言った言葉、まんまブーメランだったわ。このまま突き進んでたら、晃弘さんも、奥さんも、私も、皆傷つけるとこだった。だからさ、踏ん切りつけさせてくれて、ありがとね。」
比呂子:「そ、そんなこと!・・・私、お礼を言われるようなこと何もしてない・・・。私は私の自分勝手な気持ちで、マスターに聞いただけから。本当にごめんなさい。」
幸:「・・・それでもいいの!踏ん切りつけさせてくれたのは紛れもない事実なんだからさ!ありがと!」
比呂子:「・・・。・・・そう言ってくれて・・・ありがとう。私はそれだけで・・・、それだけでもう・・・。」
幸:「え?何?比呂子泣いてるの!?」
比呂子:「ううん!泣いてないよ!仲直りできて嬉しいだけ!」
幸:「そっか!私も嬉しい!これからも1番の友達でいてね!親友よ!」
比呂子:「・・・うん。こちらこそ!」
(少しの間)
正孝:「ほんとにお前はなぁ・・・。」
大吾:「反省してます・・・。」
正孝:「お前が幸を本当に好きなのは、すごく分かった。」
大吾:「・・・うん。でも俺反省したよ。周りが見えなくなるの、本当に直さなきゃ。このまんまじゃ、逆に幸を傷つけかねないもんな。」
正孝:「ははっ、それがわかってるだけ上等じゃね?」
大吾:「・・・んーーー!よし!まずは幸にこの想いをぶつけるぞーー!!」
正孝:「頑張れ頑張れ。」
大吾:「・・・おまえは?」
正孝:「え?」
大吾:「好きなやついるんだろ?告んないの?」
正孝:「・・・あー、まぁ、俺はなぁ。」
大吾:「何?」
正孝:「・・・焦らないことにした。焦ってもいいことないし。」
大吾:「そんな悠長なこと言って〜!誰かにかっさらわれても知らないぞ!」
正孝:「それはおいおい考える。」
大吾:「ま、お前も頑張れよ!」
正孝:「・・・おう。」
(少しの間)
大吾:「幸〜!今日は俺が家まで送ってく!」
幸:「は?なんで?」
大吾:「お詫びも兼ねて。」
幸:「あらそれは殊勝ですこと。ではエスコートされてあげますわ。」
大吾:「仰せのままに。」
正孝:「比呂子は俺が送ってくから安心しろ。」
比呂子:「ありがとう。」
正孝:「お前ら気をつけて帰れよ。特に大吾、周りちゃんと見ろよ。」
大吾:「分かってるよ!」
幸:「そっちも気をつけて。」
比呂子:「またね。」
(間)
大吾:「なぁ、幸。」
幸:「なぁに?」
大吾:「俺さ、よく考えなしに突っ走るじゃん。」
幸:「そうだね〜。もうちょっと考えなさいよ。」
大吾:「周りは見ないとなぁとは思うけど、自分の気持ちには正直でありたいわけよ。」
幸:「正直はいいことよね、度が過ぎなければ。」
大吾:「だからさぁ、ちゃんと言っておきたいんだけど。」
幸:「何を?」
大吾:「俺は、誰よりも幸を愛してるってこと!」
幸:「・・・・・・は?」
大吾:「だから、愛してるの!幸の事!」
幸:「・・・熱でもあんの?」
大吾:「なんでだよ!」
幸:「それか酔ってる?」
大吾:「今日は飲んでない!」
幸:「・・・本気?」
大吾:「本気も本気、大本気!」
幸:「ふっ、大本気ってなによ。」
大吾:「だから、俺の愛を受け止めてくれ!」
幸:「・・・ムリ。」
大吾:「だぁ!なんでだよ!」
幸:「あんたの愛は、今日の事でひしひしと感じてる。」
大吾:「お!分かってくれたか!」
幸:「でも今の私には重い・・・。」
大吾:「重い!?」
幸:「私、あんたの愛に応えられる自信ないし。」
大吾:「・・・へ?」
幸:「だから、同じだけの気持ち、返せないって事。」
大吾:「え?返す必要なくない?」
幸:「へ?」
大吾:「だって、愛してるのは俺なのに、同じだけ返すってなんだよ。お前はただ、受け取ってくれればいいの!それだけで俺は大満足!」
幸:「・・・。」
大吾:「だめ?」
幸:「・・・はは、あははははははは!」
大吾:「え!?なんで笑うの!?人の一世一代の告白を!」
幸:「ふふふ、あんたには負けたわ。」
大吾:「え?それは・・・付き合ってくれるってこと?」
幸:「ふふっ、考えときます!」
大吾:「えーー?なんだよー!」
幸:「ふふ、あははははは!」
(間)
正孝:「お前、大丈夫か?」
比呂子:「え?何が?」
正孝:「めちゃめちゃ親友宣言されてたじゃん。」
比呂子:「・・・聞いてたの?」
正孝:「聞こえたんだよ。」
比呂子:「・・・んー、思ったより大丈夫、かな。」
正孝:「そうか。」
比呂子:「もう仲直りなんてできないと思ってたのに許して貰えたし。もともと恋人にはなれるわけないと思ってたから、親友になれたのは素直に嬉しいよ。」
正孝:「そうか。」
比呂子:「心配かけてごめんね。」
正孝:「いいんだよ、俺が勝手に心配してるんだから。」
比呂子:「正孝くん、優しいね。今日はお世話になりっぱなしだ。・・・ありがとう。」
正孝:「下心あるからな。」
比呂子:「・・・へ?」
正孝:「大丈夫、俺は長期戦で行く構えだから。」
比呂子:「ん?何言って・・・。え?」
正孝:「そういう事。」
比呂子:「え?・・・は!?」
正孝:「見込みないかもしれないけど、俺は俺で頑張るから、お前も長い目で見てやってよ。」
比呂子:「え、でも私・・・」
正孝:「(被せて)あー!今は聞きたくない。とりあえず、今度二人で飲みに行こう。・・・何か変わるかもしれないだろ。」
比呂子:「・・・・・・うん。」
正孝:「・・・え!?ほんとに!?」
比呂子:「うん、私も変わりたいから。」
正孝:「・・・うん。変わるまで、付き合ってやるよ。」
比呂子:「うん。・・・ありがとね。」
正孝:「・・・おう。」
(間)
晃弘:「はぁ。みんな若いなぁ。眩しいよ。
・・・明日は朝から病院に行くか。・・・顔、見たくなっちゃったよ。後悔は尽きないが、これからの時間を大切にしていきたい。」
(別日・間)
晃弘:「いらっしゃい。」
(各々のタイミングで)
比呂子:「お邪魔します。」
幸:「マスター、来たよ〜。」
大吾:「よっす。」
正孝:「こんばんは。」
晃弘:「今日もいつものかな?」
4人:「はい!!」
END
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