【Wの絆】
二人の世界は不意に交わる・・・。
〚ご注意〛
・キャスト様の性別は問いませんが、登場人物の性別変更は不可です。
・アドリブは世界観を壊さない程度でお願いします。
《登場人物》
①アンドリュー(男性)
大手企業の専務。父親が社長のボンボン。32歳。
②龍(りゅう)(男性)
裏の世界に生まれつき、鍛錬を重ねている凄腕の殺し屋。28歳。
-------❁ ❁ ❁-----ここから本編-----❁ ❁ ❁-------
アンドリュー:「起きて飯食って仕事して帰って寝る。
アンドリュー:毎日毎日、その繰り返し。
アンドリュー:しかも親が大企業の社長で、何不自由なく生きてきて、これからも何不自由ない安泰の毎日。
アンドリュー:学生の頃から成績優秀、スポーツ万能。
アンドリュー:文武両道、品行方正を地で行く俺は、人生イージーモードで、それがずっと続くと思ってた。
アンドリュー:あの時までは・・・。」
(少しの間)
アンドリュー:(今日も一日終わったな。あ〜、疲れた〜。会社を継ぐにあたって、学ぶ事がたくさんあって、さすがに終わんねぇよ。)
アンドリュー:「(M)会社帰り。残業で深夜に帰宅していた俺は、人気のない通りを歩いていた。」
(発砲音)
アンドリュー:「ん?なんの音だ?」
アンドリュー:「(M)近くの路地裏から破裂音のようなものが聞こえ、気になって覗いてみる。
アンドリュー:ビルとビルの間の暗い路地裏。闇の世界を照らすように、月の光が差し込んでいる。
アンドリュー:その光を背にして、そいつは立っていた。
アンドリュー:全身真っ黒の服に、一つに束ねられた嫋やか(たおやか)な黒髪。その黒髪が、月の光を反射して妖艶にたなびいている。
アンドリュー:一瞬、幻想的な絵画を見ているようで、釘付けになってしまった。」
龍:「・・・ちっ。」
(そこかしこから発砲音)
アンドリュー:「わっわわっ!」
龍:「一般人がいるのに、お構い無しか、よっ!(敵を撃つ)」
アンドリュー:「(M)しなやかな動きで弾を避け、流れるように相手を一撃で倒していくその姿に、こんな状況にも関わらず、再び見とれた。」
龍:「わんさか湧いてきやがる。キリがねぇな。
龍:そこのお前!物陰に伏せろ!」
アンドリュー:「へ?」
龍:「ちっ!」
アンドリュー:「(M)咄嗟の事に、何も出来ないでいると、そいつは俊敏な動きで俺に近づき・・・。」
龍:「(足払いをする)っ!」
アンドリュー:「うわっ!?」
龍:「・・・伏せろって言ってんだろ。」
アンドリュー:「へ!?」
龍:「・・・間抜けな声出してんじゃねぇよ。」
アンドリュー:「わ!わわわ!!」
龍:「・・・ちっ、関係ないヤツ巻き込みやがって・・・。」
アンドリュー:「な、なんだ!?」
龍:「逃げるぞ。」
アンドリュー:「え?!」
龍:「走れ。」
アンドリュー:「は?!」
龍:「(走り出す)・・・っ。」
アンドリュー:「え!?は!?なんだ!?」
(弾がアンドリューの頬を掠める)
アンドリュー:「ひっ!」
龍:「早くしろ!」
アンドリュー:「はいぃぃぃ!!」
(走った先で、龍がマンホールの蓋を開けて待ってる)
龍:「こっちだ!」
アンドリュー:「え?なに?」
龍:「ここに入れ。」
アンドリュー:「え?ここ?」
(銃声)
龍:「っ!くそっ!早く入れ!(アンドリューを押し込む)」
アンドリュー:「わっ!!」
(再度銃声)
龍:「くっ!」
(龍もマンホールの穴に入る)
(少しの間)
アンドリュー:「はぁっ、はぁっ・・・。」
龍:「・・・。(息を殺して外の様子を伺う)」
アンドリュー:「な、何がどうなってんの?」
龍:「・・・。」
アンドリュー:「なぁ?」
龍:「・・・うるせえ。(歩き出す)」
アンドリュー:「あ、どこ行くんだよ!」
龍:「・・・着いてこい。」
アンドリュー:「え?」
龍:「地下にアジトのひとつがある。ほとぼりが冷めるまで身を隠す。」
アンドリュー:「ほとぼり?」
龍:「奴らが諦めるまでだ。」
アンドリュー:「あ、待てよ!」
龍:「着いてこないと置いていく。」
アンドリュー:「でも俺帰りたいんだけど・・・。関係ないし。」
龍:「じゃあこのまま上に上がって帰れ。奴らが待ち伏せしてても、俺はもう知らん。」
アンドリュー:「え!?・・・俺関係ないのに・・・。」
龍:「居合わせたお前が悪い。自分を恨むんだな。」
アンドリュー:「そんな・・・。」
龍:「・・・。(歩き出す)」
アンドリュー:「お、おい、待てよ!(着いていく)」
(少しの間)
アンドリュー:(マンホールを降りて右、1つ目を右に曲がって、3つ目を左、途中にあるドアの右側に入って、2つ目の階段をあがって・・・。)
アンドリュー:「なぁ、どこまで行くんだよ。」
龍:「・・・。」
アンドリュー:「だいぶ歩いたけど、まだ行くの?」
龍:「黙って着いてこい。ここは天然の迷路だ。はぐれると迷うぞ。」
アンドリュー:「は?迷わねぇし。」
龍:「・・・。」
アンドリュー:「なぁ、あとどれ位?」
龍:「・・・あと30分程だ。」
アンドリュー:「は!?そんなに歩くの!?」
龍:「言っただろ、アジトに行くんだ。そんなに見つけやすい場所にある訳ないだろう。」
アンドリュー:「・・・アジトって・・・。」
龍:「黙って歩け。」
アンドリュー:「・・・へーい。」
龍:「・・・」
アンドリュー:「・・・。」
龍:「・・・。」
アンドリュー:「・・・。なぁ?」
龍:「・・・。」
アンドリュー:「なぁって!」
龍:「・・・うるせえな。」
アンドリュー:「・・・あんたって何者?」
龍:「・・・。」
アンドリュー:「あんな路地裏で撃ち合って、しかもあっちは複数、あんたは一人。しかもあの身のこなし、只者じゃないだろ。
アンドリュー:命でも狙われてんの?どっかの要人?にしちゃ、ボディガードも連れてないし。
アンドリュー:あ、あんたボディガード側?でもそれにしちゃ要人もいないし。
アンドリュー:なんな訳?俺、何に巻き込まれたの?」
龍:「・・・よく喋るな。」
アンドリュー:「いや、単純に疑問。普通だろ?」
龍:「話す義務はない。」
アンドリュー:「いや、あるでしょ?巻き込まれちゃってるんだからさ。」
龍:「お前が巻き込まれに来ただけだ。」
アンドリュー:「いやいや、あんなとこで撃ち合ってる方が悪いでしょ?」
龍:「あっちが勝手に撃ってきただけだ。」
アンドリュー:「だからなんで?」
龍:「知らん。」
アンドリュー:「・・・は〜?」
龍:「・・・着いたぞ。」
(龍、扉を開けて中に入る)
アンドリュー:「(M)そこは、一見ゴミ溜りで、ドアがあるなんて分からなかった。
アンドリュー:カムフラージュなのだろうか、言われなければ通り過ぎてしまうような、奥まった所にそれはあった。」
(アンドリュー、続けて中に入る)
アンドリュー:「うわ・・・、すげ・・・。」
アンドリュー:「(M)薄暗がりの小さな部屋に、壁一面にパソコンやらよく分からない機械やらが所狭しと置いてあった。反対側の壁には、拳銃やナイフ、果ては手榴弾まで綺麗に整頓されて並んでいる。その奥には、簡易なベッドと、ささやかなキッチンらしきものがある。」
アンドリュー:「な、なに、あんた、殺し屋でもやってんの?」
龍:「・・・だったら?」
アンドリュー:「だ、だったらって・・・。おい、ちゃんと説明しろよ!(龍の腕を掴む)」
龍:「・・・ぐ。」
アンドリュー:「え?な、なんだよ。そんなに強く掴んだつもりは・・・。」
龍:「・・・うるせえ。」
アンドリュー:「え?な、なに?・・・血?お前・・・け、ケガしてんの?」
龍:「腕をかすっただけだ。」
アンドリュー:「かすったって・・・、お前の服、それ、全部血?黒いからよく分からなかったけど・・・。」
龍:「弾は貫通してる。寝てれば治る。」
アンドリュー:「寝てればって・・・、こんなに血流してて何言ってんだよ・・・。
アンドリュー:・・・俺がもたもたしてたからか?」
龍:「関係ない。」
アンドリュー:「・・・ごめん。」
龍:「・・・あ?」
アンドリュー:「マンホールに入る時だよな!俺、咄嗟な事にすぐ対応できなくて!俺が足でまといだったから・・・。」
龍:「関係ない。俺の力不足だ。」
アンドリュー:「あ!とりあえず手当しよう!止血だけでもしないと!包帯とかある?終わったらちゃんと病院行って見てもらわないと!」
龍:「うるせえ。キャンキャン喚くな。
龍:こんなのなんて事ねぇ。そっち座ってろ。」
アンドリュー:「でも!」
龍:「うるせえっつってんだろ。」
アンドリュー:「!・・・。」
アンドリュー:「(M)そう言うと、そいつはキッキンの方から包帯を出してきて、手早く止血する。
アンドリュー:こいつは一体何者なんだろうか。なんでこんな所に、アジトなる物を持っているんだろうか。あの体の動きからして、只者じゃない事はわかる。
アンドリュー:・・・本当に殺し屋なんだろうか。」
龍:「俺は少し寝る。朝になったら外まで送って行くから、ここで大人しくしてろ。この部屋にあるものに触ったら、殺すからな。」
アンドリュー:「あ、あぁ。」
(朝、昨日の路地裏)
龍:「よし、行け。」
アンドリュー:「・・・なぁ。」
龍:「昨日の事は忘れろ。」
アンドリュー:「お前ケガは?」
龍:「もう治った。」
アンドリュー:「嘘つけ!」
龍:「・・・うるせぇな。」
アンドリュー:「今日の夜、肉持ってアジトに行く。貧血には肉だ!」
龍:「・・・は?」
アンドリュー:「アジトで待ってろよ!」
龍:「いや、アジトへの道は複雑だから、お前には辿り着けない。余計な真似はするな。」
アンドリュー:「覚えてるから大丈夫!」
龍:「・・・は?」
アンドリュー:「あんた名前は?」
龍:「・・・お前に言う義理はない。」
アンドリュー:「アジトの場所バラすぞ。(得意げ)」
龍:「・・・マジで言ってんのか?」
アンドリュー:「記憶力には自信があるんだ。」
龍:「・・・。」
アンドリュー:「な・ま・え!」
龍:「・・・・・・龍、と呼ばれてる。」
アンドリュー:「リュー?」
龍:「・・・。」
アンドリュー:「ははっ!お揃いだ!俺はアンド“リュー”!紛らわしいからアンディでいいよ!」
龍:「・・・。」
アンドリュー:「じゃあまた夜に!ちゃんと待ってろよ!(走り去る)」
龍:「・・・なんなんだよ。」
(しばらくの間)
(夜・アジト)
龍:「っ・・・。」
アンドリュー:「よっ!」
龍:「・・・本当に来たのかよ。」
アンドリュー:「来るって言ったろ?」
龍:「・・・。来れる訳ないと思ってた。」
アンドリュー:「俺を見くびらないで欲しいね!
アンドリュー:さて、肉を食う前に、傷見せろ。」
龍:「は?」
アンドリュー:「あのなぁ?止血しただけで傷が治るかよ!
アンドリュー:これでも応急処置位はできるんだからな!腕見せろ!」
龍:「・・・はぁ。(しぶしぶ)」
(少しの間)
アンドリュー:「よし、これでいい。あとは化膿さえしなきゃ大丈夫だろ。
アンドリュー:暫くは俺、ここに通うから。」
龍:「はぁ?!」
アンドリュー:「そりゃそうだろ。お前、自分で処置しなそうだし。」
龍:「んなことねぇよ。」
アンドリュー:「止血だけして寝てたヤツがよく言う!」
龍:「これまでもそうしてきたから。」
アンドリュー:「・・・。」
龍:「・・・?」
アンドリュー:「とりあえず通うから!これ、決定事項な。」
龍:「来んな。」
アンドリュー:「ヤダ。」
龍:「迷惑だ。」
アンドリュー:「来るから。」
龍:「・・・めんどくせぇ。」
アンドリュー:「さ!肉食うぞ!キッキン借りるな!」
龍:「は?」
アンドリュー:「肉焼くから!」
龍:「・・・何もないぞ、焼くものとか。」
アンドリュー:「へっ!じゃーん!持ってきてるっつうの!」
龍:「・・・めんどくせぇな。」
アンドリュー:「お前は座ってろ!怪我人なんだから!」
龍:「・・・。」
アンドリュー:「ん?何?」
龍:「なんなんだよ、お前は。」
アンドリュー:「なんなんだよって、アンドリューだって言ってんだろ。」
龍:「そういう事じゃねぇ・・・。」
アンドリュー:「アンドリュー・カーター。32歳。カーターカンパニー現専務で、次期社長だ。今は経営について色々学んでる所。小さい頃から頭もよく容姿端麗でスポーツ万能、女にもモテる。嫁さん募集中のナイスガイだ。
アンドリュー:何か質問は?」
龍:「そんなこと聞いてんじゃねぇよ・・・。」
アンドリュー:「お前は?。」
龍:「は?」
アンドリュー:「お前が何者で、昨日の撃ち合いはなんで、ここで何をしているのか。
アンドリュー:俺はお前に興味がある。」
龍:「俺はない。」
アンドリュー:「まぁまぁ、ゆっくり行こうや。毎日肉持ってくるからさ。」
龍:「毎日!?」
アンドリュー:「お前が心を開いてくれるまで!」
龍:「ふざけんな!」
アンドリュー:「ははっ!まぁ、気長に待ってやるよ。」
龍:「俺はお前なんかに気を許す気は無い。」
アンドリュー:「そう言うなって!これからよろしくな♪」
龍:「もう来んな!」
アンドリュー:「や〜だよ♪」
龍:「〜〜〜〜〜〜っ!(声にならない怒り)」
(しばらくの間)
龍:「(M)それからあいつは本当に毎日来やがった。」
アンドリュー:「リューちゃ〜ん!」
龍:「リューちゃんって呼ぶな!」
アンドリュー:「お怪我の具合はいかがですか?」
龍:「もう治った。」
アンドリュー:「こらこら、無理は禁物!まだ3日しか経ってないのに治るわけあるか!」
龍:「触んな!」
龍:「(M)毎日来ては、包帯を変え、」
アンドリュー:「リューちゃん、今日の肉はA5ランクの高級肉だ!」
龍:「・・・。」
アンドリュー:「あ、今美味そうだと思ったね?」
龍:「・・・思ってねぇよ。」
アンドリュー:「我慢すんなって!今焼いてやるから!」
龍:「うぜぇ!」
龍:「(M)肉を持ってきては焼いていく。」
アンドリュー:「リューちゃんって歳いくつ?」
龍:「・・・関係ねぇだろ。」
アンドリュー:「気になるだろ〜?たぶん俺より年上だと思うんだけど。」
龍:「・・・28。」
アンドリュー:「・・・え?」
龍:「28だって言われた。」
アンドリュー:「言われた?・・・てか、ええっ!?年下!?こんなに老けてるのに!?」
龍:「うるせぇ、殺すぞ!」
龍:「半月も経つ頃には、俺の生活にするりと入り込んでいた。」
(しばらくの間)
(龍、拳銃の手入れをしている)
アンドリュー:「リューちゃんはさ、その拳銃の技術とか体術とか、どこで身につけたんだ?」
龍:「・・・。」
アンドリュー:「・・・言いたくないならいいけど。」
龍:「・・・俺は、物心着いた時には、裏の世界にいた。
龍:赤ん坊の時に、道端に捨てられていたのを、組織のボスが拾ってくれたんだそうだ。
龍:そのボスが、一から全部教えてくれた。」
アンドリュー:「へー。リューちゃんは、今もその組織にいるの?」
龍:「一応属してはいるが、ほとんど独立している。たまに組織から依頼が来て、それを受けて金を貰ってる。」
アンドリュー:「・・・殺しとか?」
龍:「・・・そうだ。
龍:要人暗殺から、赤ん坊殺しまで、依頼とあればなんでもやる。」
アンドリュー:「・・・そうなんだ。」
龍:「組織からの依頼は絶対だ。歯向かったら最後、次の日には海か土の中だ。組織の人間にかかったら、俺でもただでは済まない。
龍:まぁ、そもそも逆らう予定もないがな。」
アンドリュー:「そっか。」
龍:「・・・。」
アンドリュー:「・・・今日のリューちゃんは、お喋りだね。」
(龍、立ち上がり傷跡を見せる)
龍:「お前のおかげで傷は治った。」
アンドリュー:「うん。よかった。」
龍:「・・・お前はもう、元の世界に帰れ。」
アンドリュー:「・・・え?」
龍:「もうお前がここに来る理由はない。こっちの世界に関わるな。
龍:周りをうろつかれると邪魔なんだよ。」
アンドリュー:「・・・。」
龍:「さっきの話は、お礼みたいなもんだ。
龍:俺の事知りたがってただろ。
龍:俺には、返せるものが何も無いからな。」
アンドリュー:「ふっ・・・、ははっ、はははははは!!」
龍:「・・・?なんだ?気でも触れたか?」
アンドリュー:「ったく、不器用にも程があるだろ。
アンドリュー:普通に俺のことが心配だから、これまでの日常に戻れって言えばいいのに。
アンドリュー:ありがとうって、素直に言えばいいのに、お前は・・・くくっ、かわいいな♪ははっ!」
龍:「か!?かわ・・・!?」
アンドリュー:「わかったよ。もう来ない。」
龍:「・・・。俺もここのアジトは引き払う。来ても俺はいない。」
アンドリュー:「うん、わかった。」
龍:「・・・肉、美味かった。」
アンドリュー:「うん。また機会があったら会おう。」
龍:「・・・またはない。もし会えるとしたら、俺の殺しのターゲットがお前だった時だけだ。」
アンドリュー:「・・・ははっ!そうならない事を祈るよ。リューちゃんに狙われたら逃げられない。」
龍:「逃がす気もない。」
アンドリュー:「ははっ!・・・じゃあ。」
龍:「ああ。」
龍:「(M)あいつは手を振って、アジトを出ていった。
龍:もう会うことは無いと、お互いにわかっていた。
龍:住む世界が違うから。こっちの世界に関わって欲しくないから。
龍:あいつには、光が当たる世界で、生きていって欲しい。
龍:それが俺の、生まれて初めて持った願いだった。」
(数週間後)
龍:(メールが来てる。組織からの依頼だな。)
龍:「・・・次のターゲットはここか・・・。・・・っ!・・・そうか・・・。
龍:・・・(少しの逡巡)。・・・いくか。(決意するように)」
(しばらくの間)
アンドリュー:「こ、これは!?なんだ!?」
アンドリュー:「(M)いつもの日常に戻ってから数週間。俺は出張先からカーターカンパニーに戻ってきていた。
アンドリュー:社内に入ると、そこは異様な空気が漂っていた。そこかしこが赤く染まり、社員が倒れている。」
アンドリュー:「(倒れている男性を抱き起こす)おい!大丈夫か!?・・・くっ!
アンドリュー:(別の男性を抱き起こす)おい!何があった!?・・・だ、だめだ・・・。
アンドリュー:(社内を走り回る)くっ・・・!はぁ・・・、はぁっ・・・、誰か!・・・生きてるやつはいないか!?・・・っ、誰か!」
アンドリュー:(・・・っ、親父・・・!)
(アンドリュー、社長室へ急ぐ。)
(社内には誰も生きているものはいない)
(血の匂いでむせ返る社内)
アンドリュー:「・・・ぐぅっ!げぇぇ!・・・なんだよ、なんなんだよ・・・。」
(アンドリュー、社長室のドアを開ける直前、銃声)
アンドリュー:「っ!親父!
アンドリュー:・・・あ・・・。」
龍:「・・・遅かったな。」
アンドリュー:「っ!・・・リュー。」
アンドリュー:「(M)そこには黒服に身を包み、血にまみれて立つ、リューがいた。
アンドリュー:その脇には・・・父の変わり果てた姿があった。」
アンドリュー:「(駆け寄る)親父!!」
龍:「・・・。」
アンドリュー:「リュー!これは・・・どういう事だ・・・!?」
龍:「どうもこうも無い。俺は依頼を完遂しただけだ。」
アンドリュー:「・・・なんで!?なんで親父を!?なんでみんなを!?なんでだ!?」
龍:「・・・。おまえ、本当に知らなかったのか?」
アンドリュー:「何をだよ!?」
龍:「・・・。カーターカンパニーは、裏で闇組織と繋がっていた。表では善良な企業を装っているが、裏では殺しや脅しは日常茶飯事、邪魔な他企業を潰して回ってたそうだ。」
アンドリュー:「・・・え?」
龍:「恨みを買って当然だ。」
アンドリュー:「・・・そんなことは知らない!俺も親父も、ただひたむきに会社を大きくしようと頑張ってきた!やっとの思いでここまで来たんだ!
アンドリュー:そんな!・・・そんなことは・・・。」
龍:「事実だ。現にカーターカンパニーを潰して欲しい、恨みを晴らして欲しいという依頼が、わんさか届いたそうだ。」
アンドリュー:「そんな・・・、そんな・・・。」
龍:「お前、何も知らなかったんだな。」
アンドリュー:「っ!」
龍:「何も知らないから、能天気に殺し屋の俺を介抱してたんだ。・・・殺されるとも知らずに。」
アンドリュー:「っ!(掴みかかる)このっ!」
龍:「お前が安穏と生きている間に、父親はその手を血で染め、不幸な人間をわんさか作り出してた。」
アンドリュー:「・・・っ!」
龍:「お前はその上にあぐらをかいて、それを享受していた。」
アンドリュー:「・・・あ・・・あぁ・・・。」
龍:「殺されて当然だ。」
アンドリュー:「っ!このやろう!!(龍に殴り掛かる)」
龍:「(殴り飛ばされる)っ・・・。」
アンドリュー:「はぁ・・・、はぁ・・・。うう・・・。」
龍:「俺は殺し屋だ。お前を殺す。お前以外はもう全員死んだ。あとはお前だけだ。」
アンドリュー:「・・・俺は・・・俺は死なない・・・。死ぬもんか!
アンドリュー:っ!(近くに落ちてた拳銃を拾って構える)お前を殺してやる!」
龍:「はっ!ズブの素人に何が出来る。
龍:・・・だが、その心意気に敬意を評して・・・(ナイフを構える)相手になってやる。」
アンドリュー:「・・・。」
アンドリュー:(ナイフと拳銃。武器で有利なのは俺。近づかせなければ、勝機はある。)
アンドリュー:「・・・。」
龍:「・・・。」
(お互い相手の出方を伺う間)
龍:「・・・っ!(間合いを詰める)」
アンドリュー:「っ!このっ!(発砲)このっ!(発砲)このっ!(発砲)」
龍:「(全部避ける)・・・当たんねぇよ。」
アンドリュー:「くそぉぉぉぉぉ!!」
龍:「・・・。(アンドリューの正面から覆い被さるように距離を詰める)」
アンドリュー:「このやろぉぉぉっ!(発砲)」
龍:「う・・・。」
(少しの間)
(龍、アンドリューに抱きつくように、崩れる)
アンドリュー:「あ・・・、あ・・・。やった・・・のか?」
龍:「(耳元で囁く)・・・組織の人間が近くにいる・・・。このまま聞いてくれ。」
アンドリュー:「っ!?このっ・・・。」
龍:「すまない。」
アンドリュー:「・・・え?」
龍:「こんなことになって、・・・すまない。
龍:お前が知ってる俺のアジトに、新しい戸籍を用意しておいた。俺の知り合いの闇医者に頼んでおいたから、顔を変えて別人として生きろ。それしかお前が助かる方法はない。」
アンドリュー:「・・・は?」
龍:「お前の親父のやり方は間違っている。これ以上生かしておけば、不幸になるものが後を絶たないし・・・、お前にも会社のやり方を強要しただろう。」
アンドリュー:「そ、そんなこと・・・!」
龍:「俺には、こうするしかできなかった。
龍:・・・すまない。」
アンドリュー:「・・・。」
龍:「俺にお前は殺せない。この依頼が来た時から、失敗必至の依頼だった。
龍:この世界では、失敗イコール死だ。」
アンドリュー:「っ!」
龍:「どうせ殺されるなら、お前に殺されたかった。」
アンドリュー:「なっ!?」
龍:「・・・俺の最期のわがままだ。許せ。」
アンドリュー:「・・・は・・・。」
龍:「・・・生きろ・・・、アンディ・・・。(崩れ落ちる)」
アンドリュー:「っ!・・・なんだよ・・・!なんだよ、これ・・・!なんだってんだよ!?」
龍:「・・・。」
アンドリュー:「あ・・・、あ・・・。っ・・・くそっ!・・・なんでだよぉぉぉぉ!!(走り去る)」
(しばらくの間・数週間後)
アンドリュー:「(M)あれから、リューのアジトへ行くと、そこには例の闇医者がいた。すぐ手術が始まり、俺は今、別人として生きている。
アンドリュー:父がやっていたことは、明るみになった。誰かがメディアに告発したらしい。社員全員皆殺しの事件も相まって、センセーショナルに報じられた。
アンドリュー:だがそれももう、遠い過去の出来事のように、現実感がない。
アンドリュー:幸い組織からの追手もない。生活は一変したが、俺は今、リューが残したアジトに、そのまま住んでいる。
アンドリュー:ここに来てから、闇医者に教えられた。リューが俺を助けるために、自分一人で依頼を受けたこと。死を最初から覚悟していたこと。
アンドリュー:リューは言った。」
龍:「・・・生きろ・・・、アンディ。」
アンドリュー:ふざけんなと思った。好き勝手やりたい放題やって、そのまま逝ってしまったあいつを、殴り飛ばしてやりたい。
アンドリュー:最期の時しか俺を名前で呼ばなかった頑固なあいつ・・・、全てを投げ打って俺を救ってくれた不器用なあいつに・・・今、本当に感謝している。」
END
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