【solitario】
(ソリタリオ)
殺して欲しいの、と彼女は言った。
〚ご注意〛
・キャスト様の性別は問いませんが、登場人物の性別変更は不可です。
・アドリブは世界観を壊さない程度でお願いします。
《登場人物》
①静華(しずか)(女性)
柳本静華(やなぎもとしずか)
資産家令嬢。容姿端麗、成績優秀、学校の人気者。
②雫(しずく)(女性)
木柳雫(きやなぎしずく)
孤児院で暮らしている女の子。大人びていてドライ。
-------❁ ❁ ❁-----ここから本編-----❁ ❁ ❁-------
雫:「(M)学校一の秀才が、学校に来なくなった。
雫:柳本静華(やなぎもとしずか)。容姿端麗で人当たりも良く、人気者。
雫:先生が家に行っても、部屋から出てこないらしい。」
雫:(隣の席だからって、なんで私が行かなきゃ行けないの?
雫:プリントなんて、学校来なきゃただのゴミじゃん。特に親しい訳でもないのにさ。)
雫:「(M)大きくて立派な家。玄関の前にある呼び鈴を鳴らす。」
静華:「・・・はい。」
雫:「あ、静華さんのクラスメイトの木柳(きやなぎ)です。先生に頼まれて、プリントを持ってきたんですけど・・・。」
静華:「・・・。木柳さん?」
雫:「・・・あ、柳本さん?」
静華:「・・・。」
雫:「・・・あの・・・?」
静華:「・・・今玄関開ける。」
雫:「あ、うん・・・。」
雫:(開けてくれるじゃん。先生信用無さすぎなんじゃないの?)
(玄関のドアが開く。)
雫:「あ・・・。」
静華:「こんにちは。わざわざありがとう。」
雫:「はい、プリント。じゃあ渡したから、私はこれで。」
静華:「あ、待って。」
雫:「え?」
静華:「今日はどうして来てくれたの?」
雫:「先生が、席が隣だし、名前も似てるから調度いいって。」
静華:「・・・木柳雫、・・・柳本静華。ふふっ。確かに。」
雫:「いい迷惑。」
静華:「ねぇ、ちょっと上がっていかない?」
雫:「は?」
静華:「親もいないし、ちょっと話したいんだけど。」
雫:「え・・・私と?」
静華:「うん、あなたと。」
雫:「・・・なんで?」
静華:「いいから。上がって。」
雫:「(M)そう言うと彼女はきびすを返し、綺麗な黒髪をたなびかせながら、奥へと入っていった。」
(少しの間)
静華:「そこに座ってて。今紅茶入れるから。あ、木柳さんお砂糖いる人?」
雫:「お構いなく。すぐ帰るから。」
静華:「そんな事言わないで、ちょっと相談に乗ってよ。」
雫:「相談?」
静華:「うん、ちょっと頼みたいことがあって。」
雫:「・・・受ける義務は無いと思うんだけど。」
静華:「義務は無いけど、バッチリのタイミングだったから。運命があなたを選んだのね、きっと。」
(静華、紅茶をテーブルに置く)
雫:「・・・運命?スピリチュアルな話は信じてないんだけど。あと、めんどくさい話も迷惑。私だって忙しいんだから。」
静華:「すぐすむから。」
雫:「(紅茶を飲む)・・・何?聞くだけ聞くよ。紅茶のお礼に。」
雫:「(M)そう私が言うと、柳本静華は、穏やかなほほ笑みを浮かべて、こう言った。」
静華:「私を殺して欲しいの。」
(しばらくの間)
雫:「は?」
静華:「殺して欲しいのよ。」
雫:「なんで私が?」
静華:「ふふっ。なんで殺して欲しいの?とは聞かないのね。」
雫:「そこは興味無いし。死にたいなら勝手に死ねば?」
静華:「それがね、色々試して見たんだけど、なかなか死に切れなくて。最後の一押しをお願いできないかなって。」
雫:「・・・試した?」
静華:「そう。お風呂で手首を切ってみたり、縄を使って首吊りをしようともしたんだけど、なかなかね。
静華:死ぬのって、案外難しいのね。」
雫:「そりゃそうでしょ。」
静華:「え?」
雫:「死への恐怖とか、生存本能とか?そういうのが邪魔して、実行するのは難しいんじゃない?」
静華:「そっか・・・。やっぱり・・・。1人じゃ難しいか・・・。
静華:ねぇ、木柳さん、やっぱり(手伝って欲しいの。)」
雫:「(被せて)嫌。」
静華:「どうして?」
雫:「どうしてって・・・。手伝うって、あなたを殺すってことでしょ?私捕まってる暇ないし。」
静華:「捕まらなければいいじゃない。」
雫:「いや、捕まるでしょ。人殺したら。」
静華:「私が遺書書いて、木柳さんは手伝ってくれただけ、私は自殺ですーって書けばいいんじゃない?」
雫:「それでも、自殺幇助罪って言って、6ヶ月以上7年以下の懲役または禁錮刑です。
雫:柳本さんって、結構バカ?」
静華:「あ、ひどい!
静華:でもそっか。捕まるのか・・・。
静華:あ、じゃあ、完全犯罪を考えて実行に移してみるのは?」
雫:「それ、私になんかメリットある?」
静華:「・・・ワルを気取れる?」
雫:「別にメリットじゃないし。第一めんどくさい。」
静華:「・・・ふふっ、あはは!」
雫:「・・・?何?」
静華:「木柳さんって面白いのね!」
雫:「は?」
静華:「この状況だと普通、死ぬことを止めようと頑張ったり、未来にはいいことがある〜!とか言って説得したりしない?」
雫:「して欲しいの?」
静華:「ううん、全然。」
雫:「じゃあ別にいいじゃん。」
静華:「ふふっ!俄然木柳さんに手伝って欲しくなっちゃった!」
雫:「・・・なんでよ。」
静華:「面白いから!それに、木柳さんに手伝ってもらっても、後々気に病んで〜ってこともなさそうだし。」
雫:「まぁ、たぶん・・・ないけど。
雫:でも、面倒事に巻き込まれるのはまっぴら。さっきから言ってるけど、私これでも忙しいの。」
静華:「忙しいって言ってる割に、お茶にも付き合ってくれるし、そもそも嫌々だけど、プリント持ってきてくれるお人好しなのよね。」
雫:「・・・。帰る。」
静華:「え、ちょっと待ってよ〜。」
雫:「お茶分の話は聞いたし、私スーパーによって買い物しないとだし。あんまり遅くなると、スーパー閉まっちゃう。」
静華:「あら、家事やってるの?偉いわね。」
雫:「私、3丁目にある紫陽花園って養護施設にお世話になってるの。だから時間があればバイトするし、バイトない時は施設のお手伝いするって決めてるから。」
静華:「へー。」
雫:「興味無いでしょ?」
静華:「まぁね。」
雫:「まぁ、同情されるよりいいけど。」
静華:「同情?なんで?」
雫:「・・・。私も変わってるって言われるけど、柳本さんも大概変だね。」
静華:「・・・静華。」
雫:「え?」
静華:「静華って呼んで?私も雫って呼ぶ。」
雫:「何、急に・・・。」
静華:「死ぬ前に、雫と仲良くなりたいって思っちゃったんだもの。雫と仲良くなって、それで殺してもらうの。」
雫:「・・・はぁ?」
静華:「私、友達いないんだぁ。」
雫:「・・・え?学校に来れば、いっぱいいるんじゃない?いつも友達に囲まれてるじゃん。」
静華:「あの子達は、友達って言うか、取り巻き?私と一緒にいることがステータスになってるような子ばっかり。本音で語り合えるような子、一人もいない。私の事なんて、誰も見てない。」
雫:「ふーん。」
静華:「・・・興味無いでしょ?」
雫:「まぁ。」
静華:「ふふっ!私、雫に殺されたいなぁ。」
雫:「殺さないって。」
静華:「めんどくさいから?」
雫:「そ、めんどくさいから。
雫:もうそろそろ柳本さんの親、帰ってくるんじゃない?」
静華:「し・ず・か。」
雫:「・・・。」
静華:「静華って呼んでって言ってるじゃん。」
雫:「・・・静華の親、帰ってくるんじゃない?」
静華:「帰ってこないよ。」
雫:「・・・は?」
静華:「なんかでっかい会社経営してて、ほとんど帰ってこない。会えるのは、月1、2回かな。放置子なの、私。」
雫:「ふーん。でもま、親がいてくれるだけありがたいと思いなよ。家もお金も用意してくれて、それだけでもありがたいじゃん。」
静華:「・・・そっか。ありがたいのか。」
雫:「ありがたいでしょ。私も、施設の園長先生には感謝してる。」
静華:「・・・雫の親は、どうしてるの?」
雫:「・・・興味あるの?」
静華:「興味出てきた。」
雫:「・・・私の親は、私が小学校の時に自殺した。一家心中しようとしてたらしいけど、私だけが助かった。」
静華:「・・・ふーん。・・・一緒に死ねれば良かったのにね。」
雫:「・・・。」
静華:「一人だけになったら、孤独じゃない?」
雫:「・・・そうだね。一緒に死んでたらって、何度も思ったな。生きていくのがこんなに大変だとは思わなかったし。」
静華:「大変なんだ?」
雫:「大変だよ。18歳で園を出なきゃ行けない決まりだし、それまでにやれる事やっておかないと。」
静華:「独り立ちするってこと?」
雫:「うん。」
静華:「そっか。」
雫:「そうだよ。」
静華:「・・・。」
雫:「・・・。」
静華:「孤独を感じたりしない?」
雫:「・・・感じてるの?」
静華:「・・・私、一人ぼっちなんだ。」
雫:「・・・うん。そうなんだろうね。」
静華:「学校でも家でも、誰も私を見てくれない。誰かが隣にいても、自分の事を本当に思ってくれる人はいない。」
雫:「うん。」
静華:「本音を話せる友人もいない。聞こうとしてくれる人もいない。」
雫:「うん。」
静華:「泣いてても気づいてくれる人もいない。
静華:なのに周りはみんな楽しそうで・・・みんな笑ってる。」
雫:「うん。」
静華:「私の表面だけを見て、私を理想に仕立てあげて、私の努力も知ろうともしないで、すごいすごいって・・・。私はなんにもすごくないのに。」
雫:「でもさ、その理想を見せ続けたのは、静華でしょ?」
静華:「・・・え?」
雫:「寂しいも、頑張ってるも、静華が言わなきゃわかんないよ。ちゃんと言葉にしなきゃ、伝わらない。」
静華:「・・・言葉?」
雫:「聞いてくれない、じゃなくて、聞いてもらうの。聞いてって、言えばいいじゃん。」
静華:「聞いて・・・?」
雫:「私に言ったみたいに。」
静華:「・・・。」
雫:「親にも、言えばいいんじゃない?聞いてくれなかったら、家出でもすれば?紫陽花園に泊めてあげるよ。
雫:今だけだよ、そういうこと出来るの。大人になっちゃったら、出来ないから。」
静華:「・・・でも、聞いて貰えなかったら?結局誰も私の事見てくれないって分かったら、私、・・・私・・・。」
雫:「聞いてあげるよ、私でよければ。聞くだけだけど。」
静華:「・・・聞いてくれるの?」
雫:「うん。話してみる方が、死ぬより簡単じゃない?」
静華:「・・・うん。」
雫:「人ってさ、自分の事に精一杯で、他の誰かの事を1番に考えるのって、難しいと思う。
雫:それでもわかって欲しいと思うなら、伝えなきゃ。」
静華:「・・・うん。」
雫:「私を練習台に使っていいよ。」
静華:「伝える練習?」
雫:「うん、静華、下手そうだし、伝えるの。
雫:・・・私はさ、ぶっちゃけ、大人にならざるを得なかったからさ。ちょっとくらい、支えること、出来ると思うよ。
雫:子供のわがままくらい、聞いてあげるよ。
雫:園ではいつも、下の子達の悩み聞いてるし。」
静華:「子供じゃないから!」
雫:「子供だよ。簡単に死ぬなんて言えるのはね。大人になればなるほど、死ぬって言う時は、本当にどうしようもない時だから。」
静華:「・・・ごめんなさい。」
雫:「え?」
静華:「雫のご両親の事、知らなかったとはいえ、私を殺してなんて言っちゃって。」
雫:「うん、コノヤロウって思ったけど、静華がスッキリしたならいいんじゃない。」
静華:「雫はさ、ないの?死にたくなること。」
雫:「・・・どうしようもなく孤独で、周りを信用出来なくて、自分から一人ぼっちになって・・・。そういうのはもう、卒業したから。私も園長先生や園の子に支えられてね。」
静華:「そっか・・・。
静華:よかった。」
雫:「え?」
静華:「雫、私も大人になるね。雫みたいに。そして私も雫を支えられるようになる!」
雫:「なれるもんならなってみたら。」
静華:「なれるもんだからなってみせます!」
雫:「ふっ。じゃあとりあえず、明日学校で。」
静華:「うん。今日は来てくれてありがとう。」
雫:「うん。」
静華:「雫。」
雫:「うん?」
静華:「やっぱり運命だったと思うよ。」
雫:「え?」
静華:「雫が来てくれたのは、運命だと思う。本当にありがとう。」
雫:「・・・いいえ、どういたしまして。
雫:また死にたくなったら、私に言いなよ。」
静華:「・・・え?」
雫:「本当にどうしようもなかったら、一緒に死んであげる。」
静華:「・・・本当に?」
雫:「その方がめんどくさくないし。」
静華:「・・・ははっ。そうならないように、強くなるよ。」
雫:「うん。じゃあ、また。」
静華:「またね。」
(雫、帰る)
静華:「頑張れるよ、私。独りじゃないって思えたから。
静華:伝えたら、聞いてもらえるかもって思えたから。
静華:雫を支えられるような大人になりたいと思えたから。
静華:初めてできた友達を、失いたくないから。
静華:一緒に生きようね、雫。」
END
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