【片恋】


あなたの特別になるには、あとどれくらい?


〚ご注意〛

・一人称、語尾、言い回しなど、変更して頂いて構いません。

・アドリブは世界観を壊さない程度でお願いします。



‪《登場人物》

①片思いをしている人




-------❁ ❁ ❁-----ここから本編-----❁ ❁ ❁-------




入学式で出会って、偶然同じクラスになって、偶然隣の席になって。

気が付けば話すようになっていた。

取り留めのない話や、ノートの貸し借り、何気ないやり取りが日常になっていた。




でも実は・・・




ずっと気になっていた。

話すと楽しくて、もっと話していたいと思うようになった。

横目で見る、シャープペンを持つ姿とか、辞書をめくる姿とか。

盗み見見ていたら、思わず目が合いそうになって、サッと前を向く。

何事も無かったかのように。

初めから前を見ていましたよと言わんばかりに、黒板を写す。

心臓がどきどきと鳴る。

彼に心臓の音が聞こえませんようにと祈る。



彼が首を傾げながら視線をノートに戻し、カリカリと書き始めたのを感じると、再び横目でチラッと見てしまう。

そんな繰り返し。






彼の柔らかい笑顔が好き。

彼の静かな優しさが好き。

彼がはしゃいでいる無邪気な声が好き。

彼が部活で見せる真剣な眼差しが好き。

上げだしたらキリがない、彼の素敵なところ。





休み時間になると、自然に目が彼を探す。

彼の視界に入ろうと、近くでつい、はしゃいでしまう。

話しかけられると、笑顔がこぼれる。

ふざけ合って、肩が触れ合って顔が熱くなる。

気持ちに気づかれまいと、目を逸らす。

彼が行ってしまうと、寂しくなる。

彼の背中を目で追う。

その繰り返し。






ずっと降りつもって行く彼への想い。

毎日毎日、些細なことで、嬉しくなったり、へこんだりを繰り返す。





彼は、私の事をどう思っているんだろう。





なんとも思われていない、ただの友達。



いやいや、もしかして、彼も・・・?



右往左往する私の気持ち。

笑顔を返される度、膨らむ期待。

現実を見ろと、期待をかき消す自分。




もう!ハッキリして!



・・・いや!やっぱり怖い!!




大好きな彼の笑顔が、胸を締め付ける。




あなたの特別になるには、あとどれくらい?



どうしたら、あなたの特別になれるの?






意を決して、私の気持ちを伝えようと、心に決める・・・




・・・こと、数週間・・・。

なかなか勇気が出なくて、自分で自分に言い訳をする。



だって、二人きりになれないから。

だって、そんな雰囲気にならないから。

だってだってだって・・・。







グズグズしていた私に、もたらされたある噂。




『彼に彼女が出来たらしい。』



『らしい。』



確定ではない噂。

心臓がバクバクと鳴る。

彼の顔を、全く見られなくなって、俯きながら隣の席で授業を受ける。




単なる噂かもしれない。

でも本当かもしれない。

彼に本当のことを聞いてみようか。

いつものふざけた調子で聞けば、サラッと教えてくれるかもしれない。

でも怖い。

すごく怖い。

本当だって言われたらどうしよう。

本当だったら、私の気持ちは伝えちゃいけない。

伝えてしまったら、友達ですらいられなくなるから。

笑っておめでとうって言えるかな。

だって、泣いてしまったら、友達という立場もなくしてしまうかもしれない。

もう笑いかけてくれないかもしれない。

どうしよう。

どうしよう。

どうしよう。





学校からの帰り道。

学校から少し離れたコンビニで。

私は見てしまった。




彼が

女の子と手を繋いでいる姿を。




あぁ・・・

噂は本当だったんだ・・・。





彼は、私には見せたことがない、幸せそうな笑顔で、彼女の横に立っていた。

頬を紅潮させて、満面の笑顔で、嬉しそうに彼女に向かって何かを話している。



そこには、友達とは違う、恋人特有の雰囲気が、私との境界線を示すように立ちはだかっていた。





私は悟った。

悟ってしまった。





彼の特別は、彼女。





私は・・・特別にはなれなかった。

私は、ただの友達だ・・・。





私は彼に駆け寄ると、



「みーちゃった♪」



と、笑顔で話しかける。



これからも友達でいるために。

彼の笑顔を失わないために。

私に出来る、精一杯の強がり。




すると二人は、顔を赤らめて目を見合せ、にっこりと笑顔を見せてくれた。

それはそれは幸せそうに。





本当は、私がそこにいたかった。

私が彼と笑い合いたかった。



でも私は彼の特別ではなかった。

彼は、私にあんな顔を見せたことがない。

私には、友達としての笑顔だけを見せていた。

私が勝手に勘違いしていただけだ。

私は彼の特別になれると。

自分勝手な妄想をしていただけだ。




恥ずかしい。

私だけが特別なんだと思っていた。

彼には、私は特別なんだと。

こんな思い上がった気持ちでは、彼の特別にはなれるはずがない。

彼が、私に特別だっただけだ。





素敵な二人の後ろ姿を見送って、私も家路に着く。

自分の部屋に飛び込むと、気が緩み、涙が溢れてくる。




私の恋が、終わった瞬間だった。



END