【消えない約束】
熱き建築史は同士と共に。
〚ご注意〛
・キャスト様の性別は問いませんが、登場人物の性別変更は不可です。
・アドリブは世界観を壊さない程度でお願いします。
《登場人物》
①崇史(たかふみ)(男性)
河野崇史(こうのたかふみ)
情熱溢れる建築士。
②佳月(かづき)(女性)
樋田佳月(ひだかづき)
情熱溢れる建築士。
-------❁ ❁ ❁-----ここから本編-----❁ ❁ ❁-------
(同時くらいに)
崇史:「かんぱーい!」
佳月:「かんぱーい!」
崇史:「いやぁ、今回の大口の契約、本当に取れてよかったわ!」
佳月:「本当にね〜。ライバル社が出てきた時には焦ったよね〜。」
崇史:「まっ、俺がいたから勝って当然だけどな。」
佳月:「またぁ、大口叩くー。」
崇史:「だってそうだろ〜?
ライバル社がどんな新しい設計を持ってこようが、俺の設計には敵わない!
それにお前の話術と繊細な建築模型があれば、向かうところ敵無し!」
佳月:「お褒めに預かり光栄です♪」
崇史:「家を建てるって言うのは、一生にそう何度もあるもんじゃない。
しかも注文住宅ともなれば、こだわりが多いお客様が多い。
お客様のご要望とあらば、たとえ火の中水の中、だ!」
佳月:「叶えられてこそ、私達が携わる意味があるものね〜。」
崇史:「そうなんだよ!さすが樋田、わかってるなぁ!」
佳月:「河野君、もう酔ってるの?ペース早すぎじゃない?」
崇史:「樋田も飲め飲め!今日は盛り上がろうぜ!」
佳月:「それもそうだね!
じゃあ改めて!かんぱーい!!」
崇史:「かんぱーい!!」
(少しの間)
崇史:「結構飲んだな。」
佳月:「うん、結構酔い回ってきた。」
崇史:「樋田と初めて会ったのって、高校のときだっけか。」
佳月:「そうだよ。河野君問題児で、委員長の私は手を焼いてたんだから。」
崇史:「あの時は俺も若かったからなぁ。」
佳月:「若気の至りってやつ?」
崇史:「そうだな。
樋田もツンツン人につっかかって来て、うるさいのなんのって。」
佳月:「それは河野君がサボりの常習犯だったからじゃない!
その度に駆り出される私の身にもなってよ!」
崇史:「ははっ!悪い悪い!あの時は、俺もツンツンしてたなぁ。」
佳月:「印象最悪だったもんね。(苦笑)」
崇史:「それはおまえもだろ(笑)」
佳月:「・・・なんだかんだ、腐れ縁でここまで来たけど・・・。なつかしいなぁ。」
崇史:「そうだなぁ。」
(過去の回想ー高校時代ー)
佳月:「あ!河野君!やっと見つけた!」
崇史:「げっ!うるせぇやつが来た・・・。」
佳月:「もう!河野君がサボる度、私が探しに行かせられるんだからね!いい迷惑なんだけど!」
崇史:「じゃあ来なきゃいいのに・・・。」
佳月:「そういう訳には行かないでしょ!さぁ、早く教室戻るわよ!」
崇史:「一人で戻っとけよ。俺は今、太陽光を浴びて、エネルギーをチャージしてるんだ。」
佳月:「はい!?何訳分からないこと言ってんのよ!」
崇史:「わからなくないだろ。人間、太陽の光を浴びないと、健康でいられないんだぞ。」
佳月:「そんなのは休み時間にやってよ!今やらなくたって・・・」
崇史:「(被せて)今やらないと俺は死んでしまうんだ!」
佳月:「はぁ!?」
崇史:「委員長、一人で戻れよ。俺は見つからなかったって言っといてくれ。」
佳月:「見つけてるのに!?」
崇史:「そうすれば、仕方ないってなるだろ。」
佳月:「河野君が戻れば済むことなんじゃないの?」
崇史:「俺は忙しいの。」
佳月:「屋上でのんびり日光浴してるようにしか見えないんですけど!?
さぁ!四の五の言わずに戻るわよ!」
崇史:「いてて!引っ張んなって!
わかった!わかったから!
・・・ほんっとにうるせぇなぁ・・・。」
佳月:「何か言った!?」
崇史:「なんでもねぇよ!」
(回想終わり)
崇史:「懐かしいなぁ。」
佳月:「あの頃から私、河野君のおしり引っぱたいてる気がする。」
崇史:「そうかぁ?」
佳月:「そうだよ。」
崇史:「まぁ、あの頃から樋田は、しっかり者だったもんなぁ。
あの頃から既に、建築士になる夢、持ってたんだろ?」
佳月:「そうだね、高校の頃にはもうなりたいって思ってたかな。
小さい頃に震災にあって、建物とかが全部津波で流されて・・・。私の家も、全部なくなった。幸い家族は全員無事だったけど、幼いながらにみんなの絶望は感じ取ってた気がする。」
崇史:「・・・。あれはな・・・。衝撃だったよな。本当になんにもなくなるんだもんな・・・。」
佳月:「でも、ボランティアで来てくれた人とか、本当に良くしてくれてね。人の優しさやありがたみもすごく感じた。」
崇史:「うん。・・・わかるよ。」
佳月:「震災からしばらくたって、ようやく再建が始まって、うちも新しい家を建てることになったんだけど、その時相談にのってくれた建築士さんがね、本当に親身になってくれて。
幼い私の話も、ちゃんと聞いてくれたんだ。」
崇史:「へぇ。」
佳月:「水が怖いって言ったらね、
『じゃあ、コンクリート建てにして、炭素繊維が入った補強シートで頑丈に作ろう!この家が、佳月ちゃんを守ってくれるよ!』
って熱弁するのよ?子供に炭素繊維シートとか言っても分からないのに(笑)。」
崇史:「ははっ!・・・いい人だったんだな。」
佳月:「うん。
それで、『私もお兄さんみたいになりたい!』って思ったわけ!」
崇史:「なるほどなぁ。
で、それが樋田の初恋だったと!」
佳月:「もう!ちゃかさないでよ!真剣に語ってるのに!」
崇史:「悪い悪い。」
佳月:「・・・でも、そうかも(笑)。」
崇史:「(にやにやしながら)そうだろうなぁ。」
佳月:「河野君は?なんで建築士になろうと思ったの?」
崇史:「俺はそんなに深い理由ないよ。」
佳月:「そうなの?」
崇史:「高校の時出会った、わぁわぁ喚いてくるうるさい委員長が、そんな夢語って目をキラキラさせてたもんだから、見返しがてらに俺の方が先に建築士になって、悔しがらせようと思っただけ。」
佳月:「はぁ?」
崇史:「そしたら、意外に設計とかデザインとか面白くて、委員長のことなんか忘れて没頭してた。」
佳月:「へぇ。」
崇史:「だから、この俺という素晴らしい建築士が誕生したのは、半分その委員長のおかげ!」
佳月:「ほほぉ・・・。」
崇史:「いや、半分は言い過ぎか。10分の1くらい?」
佳月:「もう!なんでそこで落とすかな!」
崇史:「いや、ちゃんと感謝してんだろ、10分の1!」
佳月:「半分って言ったんだから、半分でいいじゃない!」
崇史:「いや、半分は言い過ぎだろ。ほとんどは俺の努力の結果なわけだし。」
佳月:「そうだけど!」
崇史:「まぁ、何にせよ、本当に感謝してるよ。俺、この仕事、天職だと思ってるし。」
佳月:「・・・うん、私も。この仕事本当に好き。ずっと続けていきたいな。」
崇史:「これからも河野樋田コンビで、幸せになれる家を作っていこう!これからもよろしくな!」
佳月:「うん!こちらこそよろしく!」
(少しの間)
崇史:「ん〜!飲んだ飲んだ!」
佳月:「結構飲んだねぇ。」
崇史:「明日も仕事だから、シャキッとしないとな。」
佳月:「二日酔いのまま仕事来ないでよ〜?」
崇史:「大丈夫だ!ウコン飲んでるからな!」
佳月:「あはは!さすが、万全じゃん!」
崇史:「お客様のニーズに合わせて、むしろ先回りしてお応え致します。」
佳月:「別にウコンはニーズじゃないけど(笑)
佳月:あ、ほら、信号青に変わったよ。」
崇史:「おう!行くか!」
佳月:「もう、気をつけてね〜。足、千鳥足になってるよ。」
崇史:「大丈夫だって。
!!」
(信号無視したトラックが突っ込んでくる)
崇史:「樋田!!あぶないっ!!」
佳月:「え?きゃ!!!」
(崇史、佳月をかばって跳ねられる)
(佳月、崇史に突き飛ばされる)
崇史:「がっ!!!!!」(同時に)
佳月:「いっ!!!!!」(同時に)
(少しの間)
佳月:「(起き上がりながら)・・・い、たたたた。・・・。河野君?・・・河野君!!!」
(佳月、崇史に駆け寄る)
佳月:「河野君!河野君!!目を開けて!河野君!!
誰か!救急車呼んでください!救急車!!」
(しばらくの間)
(病院)
佳月:「・・・うっ、ぐすっ、河野君・・・。」
佳月:「(M)河野君はすぐに救急車で運ばれた。救急車の中でも意識はなく、病院に着くと、すぐ手術室に運ばれて行った。
今は集中治療室でベッドに横たわっている。
お医者様の話によると、できる限り手は尽くしたが、目が覚めるかは分からないとの事。所謂、植物状態だそうだ。」
佳月:「・・・ううっ、なんでこんなことに・・・。」
佳月:「(M)ご両親も駆けつけ、私は泣きながら状況を説明し、謝った。謝るしか出来なかった。
彼のご両親は、私の怪我を心配して下さり、『あなたが無事で良かった。あなたを庇って事故に遭うなんて、あの子らしいわ』と、目に涙をいっぱい溜めて、微笑んでくれた。
その姿を見て、私はいたたまれなくなり、病室を出た。」
(病院の待合室)
佳月:「・・・っ、ううっ、うう・・・。」
崇史:「おい。」
佳月:「・・・ううっ・・・。」
崇史:「おーい!」
佳月:「・・・?」
崇史:「おーい?何泣いてんだよ。」
佳月:「・・・!?」
崇史:「樋田?」
佳月:「!?!?」
佳月:「(M)振り返ると、そこには、半透明になった河野君が・・・浮いていた。」
佳月:「!?え!?は!?え!?河野君!?」
崇史:「うん、俺だけど?忘れちゃった?」
佳月:「え!?だって・・・。どうして!?」
崇史:「うーん。俺もよくわからん。」
佳月:「え!?だって河野君はまだ生きて・・・。植物状態でも生きてるのに!」
崇史:「そうなんだよな〜。魂だけ抜け出てきちゃったから、意識戻らないのかな?」
佳月:「・・・魂?」
崇史:「それ以外ある?たぶん俺、幽霊でしょ?まだ生きてるけど。」
佳月:「(言葉にならない声)!!」
崇史:「体に戻ろうとして重なってみたりしたんだけど、戻らないんだよね〜。
どうしようかなと思って病室出てきたら、お前泣いてるしさ。大丈夫?」
佳月:「だ・・・。」
崇史:「だ?」
佳月:「大丈夫じゃないのはあんたよ!早く体に戻って!」
崇史:「いやだから、試して見たけど戻れなかったんだって!」
佳月:「だって!・・・でも!!そしたらどうしたら!?」
崇史:「もう少し身体が回復してきたら戻れるとか?今、生と死の境界線なのかも。」
佳月:「なんでそんなに冷静なのよ!」
崇史:「いやだって、もう色々試して見たし・・・。戻れないものはしょうがないじゃん?」
佳月:「・・・。」
崇史:「な?」
佳月:「・・・はぁ。」
(少しの間)
崇史:「ちょっとは落ち着いた?」
佳月:「・・・うん。」
崇史:「それは良かった。」
佳月:「・・・河野君、これからどうするの?」
崇史:「そうだなぁ、どうするかなぁ。病室にいたら、戻れる時が来るのかなぁ。」
佳月:「・・・。」
崇史:「戻れる時とかわかるのかな?光ったりとか?」
佳月:「・・・。」
崇史:「うーん。」
佳月:「・・・ねぇ。」
崇史:「ん?」
佳月:「とりあえず、うち来ない?」
崇史:「・・・へ?」
佳月:「ここで話してると、私独り言言ってる変な人みたいだし、とりあえずうちで、作戦会議しよう。
うち、ここから近いんだ。」
崇史:「え?」
佳月:「一人暮らしだから、気兼ねいらないし。
うちからなら、病院来るのもすぐだし、その方がいいよ!」
崇史:「いや、ちょっと・・・。」
佳月:「そうと決まれば善は急げ!」
崇史:「いや、ちょっと待って!」
佳月:「・・・何?嫌なの?」
崇史:「いや、ありがたいけど、・・・その、・・・さすがに女性の一人暮らしの部屋にお邪魔するのは・・・。」
佳月:「・・・何?なんか変なこと考えてんの?
もう!!こんな時に!!何考えてんのよ!!
もし変なこと考えてても、触ることすら出来ないんだから、大丈夫でしょ?」
崇史:「まぁ・・・、そうなんだけど・・・。」
佳月:「ほら!いくよ!私、これ以上、道行く人に変な目で見られたくない!」
崇史:「・・・はい。」
(ちょっとの間)
佳月:「気にせず上がってー。」
崇史:「はい、お邪魔します。」
佳月:「適当に座ってて・・・って浮いてるか(笑)」
崇史:「そうですね。」
佳月:「ん〜?なんか調子狂うな。なんで敬語?」
崇史:「気にすんな。」
佳月:「女性の部屋、上がったことないわけじゃないでしょうに。大学時代とか、彼女取っかえ引っ変えだったじゃん。」
崇史:「それ、語弊があるぞ!」
佳月:「あはっ!でも事実でしょ?」
崇史:「俺はモテたからな!」
佳月:「はいはい。」
崇史:「自分で話振ったからにはちゃんと聞けよ!」
佳月:「はいはい。」
崇史:「おまえな〜。」
佳月:「改めて、河野君。
助けて頂き、本当にありがとうございました。
なんでこんなことになってるのかは分からないけど、河野君の目が覚めるまで、なんでも協力するからね!」
崇史:「あぁ・・いえいえ!どういたしまして!!
ってのもなんか変だけど(笑)
咄嗟に体動いちゃっただけだし、気にすんな。
樋田が無事でよかったよ。」
佳月:「本当にありがとう。」
崇史:「いや、こちらこそ、たぶんこれから迷惑かけるけど、よろしくお願いします。」
佳月:「頑張って、目が覚める方法探そうね!」
崇史:「ありがとな。」
佳月:「こちらこそ、だよ。」
(少しの間)
佳月:「さてと、とりあえずまた明日病院には行くとして、当面どうするかなんだけど・・・。」
崇史:「いつ戻れるかわかんないから、基本的には病院にいるよ。なんか助けて欲しいこととかあったら、その都度報告する。」
佳月:「うん、わかった。」
崇史:「樋田も疲れただろ。そろそろ寝ろ。」
佳月:「・・・うん、そうだね。
とりあえずお風呂入ってこようかな。」
崇史:「あぁ、行ってゆっくり温まってこい。」
佳月:「・・・覗かないでよ?」
崇史:「!覗かねーよ!!!」
佳月:「あはは!
テレビつけとくから、のんびりしててよ。」
崇史:「・・・ありがとな!」
佳月:「どういたしまして。」
(佳月、お風呂へ行く)
崇史:(さてと・・・。
幽霊ってのは、腹も減らねぇし、眠くもなんねーのな。体の方が寝てて、点滴もしてるからなのかね?)
(崇史、テレビのリモコンを触ってみる)
崇史:(ほっ!・・やっぱり、すり抜けるか・・・。
壁もすり抜けるのかね?・・よっと!)
(崇史、すり抜けてみる)
佳月:「え?」
崇史:「あ・・・。」
佳月:「な、な、な、何入ってきてんのよ!!!」
崇史:「あ、あ、ごめん!!!わざとじゃない!!わざとじゃないって!!!」
佳月:「出てってよーーーーーー!!!!!」
崇史:「ごめんってーー!!!」
(崇史、出る)
崇史:(や、やべぇ!やらかした!!
でも佳月のやつ、こう・・・(自分の理想の女性を思い浮かべて一言どうぞ)
いやいやいやいや!!だめだぞ!反省しろ、反省!!)
(しばらくの間)
佳月:「ーーーーー(怒)」
崇史:「ごめんって、わざとじゃないんだって!
物が触れるのかとか、壁すり抜けられるのかなって試してたら、たまたまだなぁ・・・。」
佳月:「ーーーーー(怒)」
崇史:「・・・ごめんなさい。」
佳月:「・・・もういいよ!忘れて!!」
崇史:「え?」
佳月:「わ・す・れ・て!!!」
崇史:「・・・はい。ごめんなさい。」
(少しの間)
佳月:「さてと、私はそろそろ寝ます。」
崇史:(言い方がまだ怒ってんだよな・・・。)
佳月:「何?」
崇史:「あ、なんでもないです。おやすみなさい。」
佳月:「河野君は眠れるの?」
崇史:「うーん、たぶん寝れないな。全然眠くないし。」
佳月:「そっか。」
崇史:「うん。」
佳月:「じゃあテレビだけはつけとくよ。寝れないと、暇だろうし。」
崇史:「うん、ありがとう。」
佳月:「じゃあ寝るね、おやすみ。」
崇史:「おぉ、おやすみ。」
(少しの間)
崇史:(これからどうすっかな。
ずっとここにお世話になる訳にも行かないし・・・。
・・・目が覚める保証もないし。
親にも迷惑かけてるし、ほんっと情けないな。)
(しばらくの間)
佳月:「(M)それから毎日、私は仕事と病院を行ったり来たりしていた。
時間ができると病院に行き、河野君が目覚めていないか確認する。」
崇史:「(M)それから毎日、俺は病院に行った。
身体に入ってみたり、身体の耳元で大きな声を出して起こしてみたりしたけど、俺の身体はうんともすんとも言わない。」
(少しの間)
佳月:「なかなか難しいね〜。」
崇史:「そうだな〜。」
佳月:「先生の話だと、身体は徐々に回復してるって言ってたんだけどなぁ。」
崇史:「でもそもそも植物状態だから、身体は回復しても、脳がやられてたら難しいだろ。」
佳月:「・・・うーん。」
崇史:「むしろ俺は、ここにずっと居させてもらってる事の方が申し訳ないんだけど。
樋田と言えど、連れてきたい彼氏の一人や二人いるだろ?」
佳月:「・・・。・・・いないもん。」
崇史:「ん?」
佳月:「彼氏なんていらない!私には仕事が恋人だから!!」
崇史:「・・・ぷっ!」
佳月:「あ!なによ!」
崇史:「彼氏がいない女の常套句(笑)」
佳月:「うるさいっ!!」
崇史:「おぉー、可哀想でちゅね〜、よしよしよしよし!」
佳月:「頭なでようとしないでよ!憐れむな!!」
崇史:「憐れんでない憐れんでない!」
佳月:「じゃあ何よ!」
崇史:「笑ってる」
佳月:「尚悪いわ!」
崇史:「はははっ!
大丈夫大丈夫、俺だっていない!」
佳月:「なんの大丈夫よ!」
崇史:「俺らは仕事に生きるんだもんな!!」
佳月:「そうよ!」
崇史:「お客様に理想のお住いを!!」
佳月:「お客様に理想のお住いを!!」
崇史:「よし!河野樋田コンビで、建設界の天下取ってやろうぜ!」
佳月:「おーーー!!」
(少しの間)
崇史:(もう1週間か・・・。
これ以上樋田にも迷惑かけられないな。
どうすっかな・・・。
・・・ぶっちゃけ、これ以上親の泣き顔見てるのも辛い・・・。
俺、どうしたらいいんだろう・・・。
・・・泣きたいのに、幽霊って涙も出ないのな・・・。)
(少しの間)
佳月:「(M)夜中に目が覚めて、ふと横を見ると、河野君がテレビの方を見ていた。
テレビの方を見ているのに、テレビは見ていない。何か考え事をしている様だった。
その横顔が・・・。
・・・泣いているように見えた。
涙は流していない。流していないのに、なぜか泣いているんだなとわかって、胸が締め付けられる。
声をかけていいのか、そっとしておいた方がいいのか分からずに、私はそっと目を閉じた。」
(しばらくの間)
佳月:「・・・。」
崇史:「・・ん?樋田、起きたのか?」
佳月:「うん、おはよう。」
崇史:「おはよう。」
佳月:(河野君、いつも通りだ。)
崇史:「?どした?」
佳月:「ううん、なんでもない。
さ!今日も頑張ろう!頑張って起きようね!!!」
崇史:「なんだそりゃ(笑)」
佳月:(河野君が何も言わないなら、私も聞かない。
言いたくなったら、なんでも聞くからね!)
(数日後)
佳月:「今日も起きなかったかぁ。
毎日話しかけに行ってるのにな。聞こえないのかな。」
崇史:「こっちには聞こえてんだけどな。」
佳月:「そうなんだよね。こっちから返事返ってくるんだよね〜。」
崇史:「返事しないよりはいいかと思って。」
佳月:「・・・お気遣いありがとう。」
崇史:「どういたしまして。」
佳月:「(M)もうすぐ3週間が経とうとしていた。
最近、河野君が考え事をしている時間が増えた。
私が話しかけても、生返事をするか、聞き返されることが多い。」
佳月:(どうしたんだろう。聞いてもいいのかな?)
(少しの間)
崇史:「なぁ、樋田。」
佳月:「え?なぁに?」
崇史:「俺、ちょっと考えたんだけど・・・。」
佳月:「うん、何?」
崇史:「ここを出ようと思って。」
佳月:「・・・え?なんで?」
崇史:「ここに居させてもらうのは、本当にありがたいんだけど、ここにいるより、やっぱり病院にいた方がいいかなと思って。
ほら、いつ目が覚めるか分からないからさ。」
佳月:「・・・そっか。」
崇史:「長い間、悪かったな。」
佳月:「ううん、そんなことない!
河野君は命の恩人だし、当たり前の事だよ!」
崇史:「そんな事ないよ。
3週間も、ただの同僚を、しかも男を住まわせてくれるなんて、普通できないよ。」
佳月:「でも、河野君は良いヤツだって分かってるし。
あのクソガキだった頃がウソのよう・・・。」
崇史:「うっせ!(笑)」
佳月:「それは半分冗談だけど。」
崇史:「半分かよ。」
佳月:「半分だね。
じゃあ、病院で会おう。その時にまたこれからのことも相談しよう。
ちょっと人目は気にしなきゃだけど。」
崇史:「樋田、それももういいや。」
佳月:「え?」
崇史:「身体の方に話しかけるのも、親が毎日やってくれてるし。これ以上やれることもないだろ?」
佳月:「でも私は・・・」
崇史:「(被せて)樋田。俺はお前に、仕事をもっと頑張って欲しい。
俺にかまけてる時間があったら、お客さんと向き合えよ。
俺が戻った時、仕事がありません、じゃ、元も子もないだろ。」
佳月:「それはそうだけど、仕事もちゃんとやってるよ?
私が仕事に支障をきたすように見える?」
崇史:「樋田がしっかり者なのは知ってるよ。
だけど、無理してないとは言わせないぞ。
病院に行ってる分、仕事持ち帰ってやったりしてるだろ。」
佳月:「それはしょうがないじゃない、中抜けさせてもらってる以上、そこは私が頑張らなきゃ(行けない部分だもの)」
崇史:「(被せて)だから、その無理してる部分を、仕事に当てろって言ってんだ。
起きるかどうかも分からないやつに時間使ってるくらいなら、夢のために頑張れよ!」
佳月:「それとこれとは・・・」
崇史:「違わない!」
佳月:「え?」
崇史:「違わないよ!お前の夢は、憧れの建築士さんみたいになって、色んな人が幸せになれる家を作ることだろ?
俺がいるせいで、それが疎かになって、お前の夢を邪魔してるのが嫌なんだよ!」
佳月:「そんなこと・・・」
崇史:「ないなんて言わせないぞ!」
佳月:「!」
(少しの間)
佳月:「・・・私だって・・・」
崇史:「・・・え?」
佳月:「私だって同じだよ!
同志だったじゃない、私達!!
一緒の夢を持って、一緒に叶えてきて、これからも一緒にやるはずだったじゃない!!河野樋田コンビで、夢を叶えていくんでしょ!!
それが・・・。どうして・・・。
どうして突然そんなこと言うの!?一緒に頑張らせてよ!!一緒に夢叶えようよ!!」
崇史:「・・・・・・・・・・だからだよ・・!」
佳月:「・・・え?」
崇史:「・・・お前のことが好きだからだよ!!」
佳月:「・・・・・・・・・・・え?・・・ええ!?」
崇史:「ほんとに鈍い女だな・・・(ため息)」
佳月:「え?だって、だって、そんな、そんな感じ全然なかったじゃない。
いつだって憎まれ口ばっかりで、うるさいうるさいって言ってたじゃない!」
崇史:「だーかーらー、お前にその気がないのがわかってたから、隠してたんだろ。」
佳月:「え?え?・・・いつから?」
崇史:「・・・高校の時から・・・。」
佳月:「えぇ!?」
崇史:「っ!まぁ!それは置いといて!」
佳月:「え!置いとくの!?」
崇史:「好きな女の夢を邪魔してまで、一緒にいたくないの!
このままずっと起きないかもしれない。いつか・・・死んでしまうかもしれない。それがいつかも分からないのに、ずっとこのまま無理させるなんて・・・出来るかよ。」
佳月:「・・・そんなこと・・」
崇史:「・・・。」
佳月:「・・・そんなこと考えてたんだ。」
崇史:「ん?」
佳月:「最近、よく考え事してるなって思ってた。
・・・私の未来のこと考えてくれてたんだ。」
崇史:「・・・。」
佳月:「ありがとう、河野君。
告白も、嬉しかった。」
崇史:「・・・おう。」
佳月:「・・・でも私は、病院通い、やめる気ないよ。」
崇史:「・・・は?」
佳月:「やめる気ない。」
崇史:「なんでだよ!」
佳月:「・・・たぶん、・・・好きだから?」
崇史:「・・・え!?」
佳月:「私だって、河野君と一緒に夢叶えたいの!
ずっと同志だって思ってたけど、たぶんそれって、好きだからなんだろうなって、今気づいた。」
崇史:「・・・マジ?」
佳月:「・・・マジ。」
崇史:「・・・。」
佳月:「だから、一緒に頑張らせてよ。」
崇史:「・・・いいのか?」
佳月:「ん?」
崇史:「さっきも言ったけど、このまま起きないかもしれないんだぞ。」
佳月:「うん。」
崇史:「幽霊の俺だって、いつ消えるか分からないんだぞ。」
佳月:「うん、わかってる。」
崇史:「・・・それでも一緒にいてくれるのか?」
佳月:「うん!」
崇史:「・・・でも!これ以上・・・!」
佳月:「私が一緒にいたいからいるの!文句は言わせない!」
崇史:「・・・・・・・・樋田。」
佳月:「ん?」
崇史:「・・・・・・・ありがとう。」
佳月:「・・・・・・うん。私の方こそ、ありがとう。」
(しばらくの間)
佳月:「ねぇ、これからの事なんだけどさ。」
崇史:「うん。」
佳月:「私も、体に無理が来ない程度にするから、河野君も一人で抱え込まないで欲しい。」
崇史:「・・・うん。」
佳月:「河野樋田コンビなら、乗り切れる!!」
崇史:「・・・おう!!」
佳月:「一緒に頑張ろうね!」
崇史:「おう!!」
佳月:「あと、さ・・・。さっき高校の時から好きだったって言ってくれた事なんだけどさ・・・」
崇史:「・・・今更掘り返すなよ。」
佳月:「なんでよぉ!聞きたいじゃんか!」
崇史:「今までずっと気づきもしなかったお前に、何も聞く権利はない!」
佳月:「なんでそんな意地悪言うの!?
・・・あ、わかった!照れてるんでしょ♪」
崇史:「なっ!」
佳月:「そうかぁ、そうだよねぇ♪
今まで自分の気持ちが届かなかった愛しの女の子に、やっと気持ちを伝えて、そして実ったんだもんねぇ♪」
崇史:「う、えるせぇな・・・。」
佳月:「ほら、もう1回言ってみ?」
崇史:「な、何をだよ?」
佳月:「私の事、なんだって?」
崇史:「はぁ!?」
佳月:「言ってみてよ!」
崇史:「なんでだよ!」
佳月:「聞きたいから♪」
崇史:「やだよ!」
佳月:「いいじゃぁん!もう一回言ってよ〜!」
崇史:「うるせぇ!」
佳月:「ねぇってば〜!あ、顔真っ赤だよ?・・・って、あれ?」
(佳月、崇史が薄くなってることに気づく)
佳月:「・・・河野君・・・。」
崇史:「ん、何?」
佳月:「なんか・・・いつもより薄くなってない?」
崇史:「え?・・・そうか?自分ではよく分からないけど。」
佳月:「ねぇ・・・ちょっと・・・やだよ・・。
このまま消えたりしないよね・・・?」
崇史:「え?」
佳月:「だって、どんどん薄くなってきてる・・・。」
崇史:「・・・ほんとだ。自分でもわかるくらい薄くなってる・・・。」
佳月:「ねぇ・・・やだぁ・・・。」
崇史:「樋田・・・。」
佳月:「やだよ・・・これから・・・一緒に頑張ろうって言ったじゃん!・・・消えないよね?・・・大丈夫だよね?」
崇史:「樋田、落ち着け。」
佳月:「!・・・どんどん薄くなってる!!やだぁ!!置いていかないで!河野樋田コンビで頑張るって言ったばっかりじゃん!!」
崇史:「落ち着け!佳月!!!」
佳月:「!」
(崇史、佳月を包み込むように手をまわす)
崇史:「俺はいなくならない。例え見えなくなっても、佳月と一緒にいるから。会えなくなるのは辛いけど、ずっと一緒にいるよ。」
佳月:「・・・ずっと・・・一緒に・・・?」
崇史:「うん、ずっと一緒にいる。」
佳月:「・・・たか・・ふみ・・。」
崇史:「ん?」
佳月:「・・・好きだよ。」
崇史:「うん、俺も大好きだよ。
ってか、俺の方が絶対好きだっての。何年片想いしてたと思ってんだよ。」
佳月:「・・・ふふっ。」
崇史:「・・・佳月、夢、叶えろよ。俺も一緒にいてやるから。」
佳月:「・・・うん。」
崇史:「・・・佳月・・・。」
佳月:「・・・崇史・・・。」
(崇史、消えてしまう)
佳月:「・・・た、たか、ふみ?
崇史?崇史、どこ?・・・・・・・・。
う、うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!(号泣)」
(病院)
佳月:「(M)私は急いで崇史の病室に駆けつけた。
病室は、夜中なのに騒がしく、お医者様と看護師さんが入れ代わり立ち代わり、慌ただしく動いていた。」
佳月:「はぁ・・はぁ・・はぁ・・」
佳月:「(M)息も整わないうちに、彼の病室の扉の前で声をかけようとすると・・・、彼のお母さんが・・・泣き崩れていた。」
佳月:「っ!!
崇史っ!!!」
(しばらくの間)
(数週間後)
佳月:「崇史?いる〜?」
崇史:「おう!佳月か!」
佳月:「元気そうだね!リハビリ、頑張ってる?」
崇史:「頑張ってるよ!1ヶ月くらいとはいえ、寝たきりだったんだ。体力も無くなってるし、事故の怪我もな〜。なかなか元には戻らないよ。」
佳月:「(M)崇史は、無事に目を覚ました。
あの夜、病室に着いた私は、彼のお母さんに突然抱きつかれた。
『崇史が起きたのよ!助かったのよ!』
と、目にいっぱいの涙を浮かべて。
私もお母さんと抱き合ったまま、二人で泣きじゃくりながら喜んだのだった。」
佳月:「本当によかった。もう消えちゃうんじゃないかって、本当に心配したんだから。」
崇史:「あの時の佳月、かわいかったなぁ!
『消えちゃやだぁ!!』とか言って!」
佳月:「うるさい!本当に心配したんだからね!」
崇史:「ごめんごめん!無事戻りました。佳月のおかげです。ありがとうございました。」
佳月:「もう、しょうがないなぁ。
早く体調戻してよね!河野樋田コンビで天下とるんでしょ?」
崇史:「おう!任せとけ!!」
佳月:「調子いいんだからぁ!」
(二人笑い合う)
佳月:「・・・大好きだよ、崇史。」
崇史:「俺も大好きだよ、佳月。」
END
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