【すれ違う二人】


二人はどこまでもすれ違う・・・。


〚ご注意〛

・男性が読んでも構いません。その場合、一人称、語尾、言い回しなど、変更して頂いて構いません。(内容は女性よりです)

・アドリブは世界観を壊さない程度でお願いします。



‪《登場人物》

①彼への愛をどこまでも貫き通す人




-------❁ ❁ ❁-----ここから本編-----❁ ❁ ❁-------




朝起きると、あなたは私を起こさないように、そっとベットを出る。

あなたの方が出勤時間が早く、私はあなたの優しさに甘えて、そのまま暖かいベットの上で寝返りを打つ。

しばらくすると、洗濯機が回る音がする。

私がやるからいいって言ってるのに、いつもあなたは自分でやってしまう。

あなたは本当に優しい。

あなたとお付き合い出来て、私は本当に幸せ者だ。





あなたが出勤し終わった後、私はモゾモゾとベット出て、あなたの部屋に入る。

ベットを直し、キッチンに向かうと、昨日私が彼のために作っておいた朝食がなくなっている。

よし、ちゃんと食べてくれた。

食べ終わったお皿が、シンクの中に、水に浸して置いてあった。

これは私の仕事。

なんでも自分でやってしまうあなたに、私がやってあげられる、唯一の事。

忙しい時はやるよと言っているのに、あなたは頑なに自分でやろうとする。

その後、私はゴミ箱をチェックする。

捨て残しはないかなと見ていると、生ゴミだけが忘れられていた。

ふふっ♪こういう所もかわいい。

完璧に見えて、こういうちょっと抜けているところに、母性本能を擽られるのだ。





私は再度キッチンへ向かう。

彼の夕食を作っておくためだ。

今日は彼が好きだと言っていたハンバーグ。

キッチンで料理をしていると、なんだか新婚になったようで、ドキドキする。

今更そんなことを言ってたら、おかしいぞって笑われちゃうかな?

この生活を始めて、もうすぐ一年経つというのに。

ハンバーグのタネが出来たので、そこに愛の隠し味!

隠し味は私だけの秘密♪

ふふふっ♪あなたが美味しいって食べてくれる笑顔が目に浮かぶようだな。

楽しみ♪

サラダとスープも添えて、ラップをかけて冷蔵庫にしまう。

夜は私の方が帰るのが遅いから、きっと彼は寝てしまうだろう。

疲れて帰った私は、彼の寝息を聞きながら、ベットに入るのが至福のひとときだ。





明日の朝食分の目玉焼きも冷蔵庫に入れると、私はテーブルに置き手紙をする。

『美味しく食べてね。愛してる。』

彼のことを思い浮かべながら書いていると、自然に顔がほころぶ。

私は幸せだ。





夜、仕事から帰ってくると、もう夜中だ。

案の定、彼は眠ってしまっていた。

寝息を聞きながら、お風呂に入り、寝支度を済ませる。

彼の顔を思い浮かべながら、私もベットに入る。

また明日。おやすみなさい。

そっと呟くと、眠りについた。





今日もあなたは、静かにベットから起きると、洗濯機を回す。

その音を聞きながら、私はまた寝返りを打つ。

いつも甘えてしまってごめんねと思いつつ、眠気には勝てず、瞼が重い。

私の活動時間は、いつも彼が出勤し終わった後だ。





いつも通り彼の部屋に入る。

朝食も夕食も、きちんとなくなっている。

全部なくなっているという事は、美味しかったんだよね?

私は嬉しくなる。

今日も張り切って夕食と朝食を作る。

今日は、昨日から煮込んでおいたカレー。

煮込めば煮込むほど美味しくなるカレー。

彼を想って作る料理は楽しい。

鍋を開けると、そこには昨日煮込んでおいたはずのカレーはなかった。



「え!?」



なんでだろう?

もしかして、我慢できなくて彼が食べちゃったのかな?

もう♪しょうがないなぁ。

そういう所もかわいい♪

私は改めて、今日の夕食を作る。

何を作ろうかなぁ?





献立を考えていると、テーブルにメモが置いてあるのに気がついた。

なんだろう?

メモを取って読んでみる。

そこには、たった一言。





『もうやめてくれ』





どういうことだろう。

何かあったんだろうか。

彼から私への、悲痛のメッセージ。

料理をするしか能のない私には、どうしてあげたらいいのか分からない。

どうしたら彼の不安を取り除いてあげられる?

どうしたら彼を癒してあげられる?

私のできることと言えば、料理だけ。

私はとっても美味しいデザートを準備することにした。

彼が好きだと言っていた、フォンダンショコラ。

真ん中のチョコのところに、いつもの愛の隠し味。

今日はちょっと多めに入れておこう。

あなたが元気になりますようにと、願いを込めて。

テーブルには、あなたへの精一杯のメッセージ。

『私はあなたの味方だよ。愛してる。』

私は後ろ髪を引かれながらも、彼の部屋を後にした。





翌朝。また彼はそっとベットを抜け出す。

洗濯機を回して、出勤の準備をする。

私は、彼が心配だけれど、どうしても眠気には勝てなかった。

明日は二人ともお休みだ。

明日きちんと話を聞こう。

明日こそは彼と話さなければ。





彼が出勤してしまった後、私は彼の部屋に入る。



彼の部屋の鍵が、回らない。

ガチャガチャと動かしてみる。

それでもどうしても回らなかった。

私は初めて彼の部屋に入った時のように、ピッキングツールで鍵を開ける。

彼の部屋は、時々鍵が変わる。

私になんの報告もなく、変えられている時が時々ある。

そんな時は、こうやって入る。

なぜ変えられているのかは分からない。

昨日のメッセージと、何か関係があるんだろうか。

彼は私に心配をかけまいと、何も言わない。

溜め込んでしまう彼が、心配だ。

また合鍵を作っておかないと。


 「開いた。」


彼の部屋に入ろうとすると、後ろからぽんっと肩を叩かれた。

その人は、私に警察手帳を見せてくる。



まさか!彼に何かあったのだろうか。

心臓がドキドキと脈打つ。

警察官の表情を伺っていると、警察署に来るようにと促された。

きっと、彼に何かあったに違いない。

心配で胸が張り裂けそうだ。

早く早くと、気ばかりが焦って、上手く歩けない。

一体彼に何があったのだろう。





警察署に着くと、警察官は訳の分からないことを言ってくる。

つきまとい行為の禁止命令?

私は彼と付き合っているのに、なぜ?

彼をここに呼んで欲しい。

彼から私達は付き合っていると説明してもらうと伝えると、これは彼からの被害届に基づき、発令されたものだと説明された。

もう訳が分からなかった。

私達は愛し合っているのに。

もうすぐ一年の記念日だと言うのに。

私達は幸せなんだ。

なんで邪魔するの?

なんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんで・・・。





私は彼に裏切られた。

彼は私が邪魔になったんだ。

あんなに尽くしてあげたのに。

そりゃあ至らないところも沢山あった。

でも私の全部で愛してあげたと言うのに。

私の全部を捧げてきたというのに。





伝わっていなかったのなら、もっともっと伝えていかなくちゃ。

もっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっと。

ねぇ、待っててね。

これまで以上の愛で、あなたを包んであげるから。




いつまでも、いつでも、あなたのそばに・・・。




END